- 書名:『ヨーロッパ鉄道旅ってクセになる! 国境を陸路で越えて10カ国』
- 著者:吉田友和
- ISBN:978-4344420526
- 刊行日:2013/07/15
- 価格:560円(税込)
- 発行:幻冬舎
- 形態:文庫
筆者は脱サラをしてライターとなった人のようで、旅モノの著作が数冊ある。
本作はユーロ圏であれば期間限定で電車乗り放題のパスを持ってフランス、イタリア、スイス、ドイツ、オランダ、ベルギー、イギリス、アイルランドなどを旅するというものである。
先日金沢の友人が結婚式を挙げるとのことで、出席することになった。
電車で行こうと思ったのだが、東京駅から越後湯沢まで上越新幹線で行き、そこから特急で2時間半くらいで計4時間弱かかる。
さらに片道で12,000円ほどかかることがわかった。
私は電車が好きなのでその路線は魅力的だったのだが、ちょいと高い。
そういえばと思い高速バスを調べるとなんと片道4000円程度で行ける事が判明した。
往復で8000円程度で行って帰って来られる。
しかしそれは深夜バスなので、車中泊だけの2泊3日の強行軍ともなる。
少し悩んだがお金の力に負けて、夜行バスを選んだ。
私の他にも一緒に行く友人が2人いたのでその2人を道連れに土曜の夜に新宿へ向かった。
結婚式は金沢駅郊外の式場で日曜の10時から始まる予定、新宿を夜11時くらいに出発して7時半に金沢に着くという按配である。
新宿と高速バスという言葉から、ヨドバシカメラの目の前からか、JRの横っちょからの出発かと思っていたが、さにあらず、甲州街道沿いの雑居ビルがまず受付であった。
新宿駅南口から5分以上歩き、3人でエンヤこらと雑居ビルの3階か4階にあがると、若者だらけ、大学生のサークルといった雰囲気で早くも場違いなのではという気持ちがバンバカ膨らむ。
コンビニで払い込みをした領収証がチケット代わりになるようなのだが、それもしっかり見もせず名前だけ聞いて係りの人はワシントンホテルの近くの乗り場まで行けと指示した。
ワシントンホテル手前の小さなゴルフ屋さんの前が発着場のようになっていて、係りの人が「~~バスはこちらです!」と叫んでいる。
係りの人は他のバス会社の人たちも混じっているのか4、5人いた。
私たちは自分たちの乗るバスの名前を叫んでいる係りの人に声をかけてここで大丈夫ですか?と聞いたところそうだとのことで待った。
まわりを見るとディズニーランド帰りの若い女の子が多数、さらに大学生前後の実家に帰るような男性が数人、あとおじさん、おばさんが少しいた。
ゴルフ屋は閉まっていて、その軒先を借りている按配なのだが、灯りもともっておらず、さらに小雨が降り出し、不安は募る。
何台か大きなトイレ付きのバスが来たが、われわれのバスではなく、少し遅れて小さなバスが到着して、それがわれわれのバスだということだった。
もちろんトイレは付いていない。
乗降口に座席表があり、そこで自分の座る席を確認するシステム。この時も領収証は見せず、名前さえわかっていればそれでいいという適当なのかシンプルなのかわからないシステムだった。
席は2つの席が並んだものが2列並ぶオーソドックスなものだが、深夜寝ることを考えるとかなり座席幅は狭い。
われわれ3人は不安な気持ちのまま乗り込んだのである。
もう時間が時間なだけにカーテンは全部閉められていて、出発後にすぐに消灯となった・・・
難民の方には失礼だが、難民が国を逃れるためにバスに乗せられている気分になる。
外の風景は見えず、運転席のほうのカーテンも閉められている。
われわれはどこに連れて行かれるのだ?という疑問を抱きながらうつらうつらするが、寝られない・・・
隣の夜行バス慣れした男性は、首に付ける膨らます枕を使いグースカと高いびき。
何回かサービスエリアに止まったが、それが唯一のリフレッシュ方法で、着くたびにわれわれ3人は降りてトイレに行っていた。
でうつらうつらしているいるうちにやっとバスは富山を過ぎ、そして高岡を過ぎ、ついに金沢駅に着いた!
あー長かった、そして眠い、結婚式に出席できるような体調ではない・・・
友人が金沢駅前のAPAホテルで風呂に入れるということを調べていたので、すぐにホテルに直行して1000円を払い3人で風呂に飛び込んだのである・・・
だが、本番はこれから、風呂から出ると8時半。
腹ごしらえを駅のコーヒー屋さんでパッとすますと、9時。
駅に迎えのバスが来ている時間である。
われわれが到着したのも、APAホテルがあるのも西口で、バスが来るのは東口。
急いで東口のバスまで走るとすでにバスは来ていて先客が乗っていた。
先客は友人家族でその3人家族は飛行機で優雅に前日入りして、新郎の案内で前日に金沢観光などを楽しんだようである。
うらやましいと言うか、別世界の出来事のようだ。
彼らから前日のことなどを聞きつつバスは走り、式場へ。
われわれ3人は普段着のままで来ていて、スーツに着替えなくてはならない。
そのためにスーツも持ってきている。
だから式場に着替え部屋の予約を入れておいた。
式場に着くや否やすぐに着替え部屋に行きスーツに着替える。
そしてフラフラのままで結婚式に突入したのである・・・
結婚式自体は料理もおいしく楽しかった。
友人も幸せそうでよかった。
二次会もあるようだったのだが、その情報を聞いていなかったので、一緒に行った友人とは誘われたら行こう、誘われていなかったら夜行バスまで金沢観光していよう、金かかるしな。
という話をしていたのだが、新郎は私らは二次会に出席するもんだと思っていたらしく、じゃあ出席しようじゃないかとなった。
式が終わったのが午後1時くらいで着替えをして式場を出て金沢駅に送ってもらって着いたのが午後2時。
前乗り3人家族はホテルで休むというので、私ら3人はというか私は北鉄線に乗ることしにした!とにかく電車に乗りたかったのだ、さらにそれがローカルな私鉄だったらなおよしと思っていたのだが、駅まで送ってくれた運転手さんに聞くと北鉄浅野川線という短いローカル線が金沢駅から出ているという情報をもらっていた。
そして北鉄浅野川線は金沢駅の地下から出ているというので行ってみると、見覚えのある車両がホームに止まっていた・・・
3人で切符を買い(2人も引きづられるようにして結局付いてきた)、電車に乗ると、やはり見覚えがあったのは間違いなかった。
それは井の頭線の昔の車両だったのである、車内には井の頭線時代の写真がいくつもペタペタと貼られていて、井の頭線ユーザーである3人は大いにはしゃいだのである。
浅野川線はおそらく10キロない距離を走るかなり短い線で、単線であった。
始発から終点までは10駅くらいであったろうか。
のどかな風景が車窓を流れ気持ちがいい、雨だけど。
終点は内灘という駅で、少し歩くと日本海まで行けるというので歩いてみることに。
10分くらい歩くと、「鉄板道路」という朝鮮戦争に関係のある史跡のような道路があり、フムフムと説明板を読む。
駅から歩いてきた道も鉄板道路だったらしい、戦争時にここから朝鮮半島に物資を運んでいたのだろうか。
そしてそこを抜けると、海が見えてきた。小雨が降り続いていた日だったのだが、海岸に出るとさらに風が強くなり、寒い・・・
さらにこの海岸は海岸の幅が大きくて波打ち際までかなり歩くことになった。3人は意地になって波打ち際まで行って写真を撮った。
曇りの日本海をバックに。
そして冷えた体を海岸近くにあるショッピングモール内の学食のような食堂でスープを飲んで暖めて駅まで戻ったのである。
ああ疲れた。
疲れきって金沢駅に着くと、友人の1人はこれから電車で帰るので2人で見送る。
1万以上かけて東京まで今日中に東京に帰るのだ、フン、無駄遣いだ!
と思いながらもうらやましい。
2人は金沢駅に見捨てられていくような気分でそいつを見送り、二次会までまだ時間があるのでお茶でもしようと朝に入ったコーヒー屋さんにまた入ったのである。
二次会の場所は駅から歩くと30分ほどのところらしく、われわれ2人はこの旅一番の贅沢、タクシーを使って会場まで行った。
会場は普通のカフェバーのようなところで、そこで7時から2時間ほどまた友人を祝った。そこには優雅な前乗り3人家族もいたが、われわれ貧乏2人組は眠気と疲れでフラフラであった・・・
二次会が終わったのは8時過ぎ。
金沢駅まで歩こうと思っていたが、寒さと疲れでまたタクシーに乗り駅へ。
そしてバスの時間まで少しあるのでまたまたさっきのコーヒー屋へ・・・
とにかく疲れた。
ホントに疲れた。
10時半にバスが到着・・・
帰りのバスは往路のバスよりも大きくわれわれの位置は最後部の端っこ、さらに席も大きい・・・
安心した2人の旅人はほぼ起きることもなく東京まで眠って行ったのである。
バスを降ろされたのはなんと、新宿中央公園近く。
駅まで10分ほどヘロヘロになりながら歩く。
寒いし眠い。
そして2人は共に朝から仕事。
急いで家に帰り、風呂に入り、仕事へ行き・・・
ホントウに大変だった。
それに比べるとこのヨーロッパ電車旅は快適なことこのうえなさそうである。
私ら2人は今度金沢行くときは電車にしようと誓ったのである。
もうすぐ北陸新幹線も通るらしいしね。