- 書名:『スットコランド日記』
- 著者:宮田珠己
- ISBN:978-4344421233
- 刊行日:2013/12/05
- 価格:800円(税込)
- 発行:幻冬舎
- ページ数:430
- 形態:文庫
宮田珠己との出会いは新潟県胎内市の越後の里というところで親鸞聖人の巨大像を見たことだった。
小さい頃に鎌倉のおばさんの家に電車で行く途中に通る大船駅。
そこに大船観音像があった。
東京駅からの横須賀線が大船駅に着く、窓の外を見ると、いつの間にか現れた大船観音像が私をジッと見ていた。
昼間に見るときはまだいいのだが、夜の闇に浮かぶ大船観音はこの世のモノではないモノのようで、アルカイックスマイルを浮かべて私を見る像の顔はとにかく怖かった。
それから10年以上経ち、大学生になっていた私は新潟で親鸞聖人の巨大像を見たのだ。
聖人と呼ぶのがはばかられるような悪人ヅラの親鸞像は私の幼き日の大船観音の記憶を呼び起こした。
東京に帰ってすぐにWebで検索したところ、『晴れた日は巨大仏を見に』のサイトが出てきた。
このサイトはおそらくどこかの出版社が運営していたサイトだったのか、宮田珠己が全国の巨大仏のレポートを書いていてその中に胎内市の親鸞聖人像の記事があった。
それ以来「巨大仏の人」という印象で私の心に残り続け、彼の著作を読むようになったのである。
本作は宮田珠己が東京(たぶん)の郊外にマンションを借り、そこから見える景色がスコットランドのようなので(実際に宮田珠己は行ったことはないみたい)「スットコランド」と名づけ、そこでの生活を日記として書いたものである。
読み進めるうちにスットコランドの場所が気になってきた。
どこだろうか?ここは。
国立市の谷保かな?と思ったが、近くに牧場のようなものがあるらしく、国立に牧場なんてあるか?
あ、京王線の百草園の近くには牧場があったから、そこらへんかな?などと考えてみたがどこだか特定するような要素は見つけられなかった。
特に大きな事件が起きたり、ドキドキハアハアする出会いがあったりするわけではなく、中年作家の日常がつづられるだけ。
興奮できる読書を求める人には向かないが中年作家の日常を眺めて、心を落ち着けたい人にはぴったりの文庫本なのであった。