- 書名: 『突変(とっぺん)』
- 著者: 森岡浩之
- ISBN: 978-4198938895
- 刊行日: 2014年9月15日
- 価格: 1,000円(税別)
- 発行: 徳間文庫
- ページ数: 733
- 形態: 文庫
小説には、「雰囲気を味わうもの」と「先が気になるもの」の二つがあるように思う。
本作は最近読んだ中でも「先が気になるもの」の中で一、二を争う面白さだった。
舞台はごく近未来の日本。地球規模で突変と言われる事故が相次いで起きていて、大阪周辺の地方がパラレルワールドの地球と入れ替わってしまって数年が経っていた。
パラレルワールドの地球には凶暴な生物たちが多数棲んでいて、大阪周辺が裏返ったため、そこが凶悪な地域に変貌してしまっていた。
日本のどこかでまた突変が起きるのでは?と戦々恐々として人々は過ごしていた。
そんな時、関東のある市にある町内がいきなり突変してしまう。
突変はもっと大きな地域で起きると想定されていたため、備蓄の食料もないし電気も水道の用意もない、とないないづくしのサバイバルが始まるのである。
登場人物たちはヒーローではなく、そこらへんの人たち。
ニート?の青年、町内会の会長、思い込みの激しい市議、スーパーの店長、など。
さて彼らは元の地球に戻れるのだろうか?
みんな突変して、嘆き悲しむが、唯一夫が突変して裏地球に行ってしまっていた女性とその息子だけは夫(父)に会えるのではないか?と喜んでいるという設定がミソになっていた。
いきなり今住んでいる町内が裏返ってしまったら?と考えると恐ろしい。
隣の人たちと未知の凶暴な生物たち相手にサバイバルできるのか。
ネットにもつながらないだろうし、スマホだって使えない、突変の情報を検索しようにもそんなことはできないのだ。
本作品はこれ以上続くと面白くなくなるかもしれないという絶妙なところで終わっている。
誰もが気になる突変の謎解きにはまだ踏み込まないし、物語の中でも触れられている突変で大儲けをしたらしい関西の怪しいおじさんについてもほとんど語られない。
続きがとにかく気になるのだが、これ以上続くと面白くなくなるかも。
ああジレンマ。