『夢はターフを駆けめぐる』 これスゲーいい名前だなぁ

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  • 書名:『夢はターフを駆けめぐる』(13巻まで出ている?)
  • 著者:狩野洋一、かなざわいっせい、他多数
  • ISBN:978-4877190415
  • 刊行日:1993/09
  • 出版:光栄
  • 価格:不明

こんばんは。

世の中には競馬をする人間としない人間の2通りしかしない、と言ったのは誰だったでしょうか。

今ではコーエイテクモゲームスと名を変えたかつての光栄が出していた競走馬に関するエピソードをまとめたのがこの本です。

Amazonで検索しても画像がなく、Google検索でもほとんど出てこないのですが当時は本屋で結構見かけたような気がするのですが今では忘れ去られている本のひとつですね。

アスキーからは競馬ゲームの傑作『ダービースタリオン』シリーズの2、3が発売。

同じく、光栄からは『ウィニングポスト』シリーズの第1作目が発売されたのがこれくらいの時期でした。

競馬界はオグリキャップ、タマモクロス、イナリワン、スーパークリークのなどのスターホースが引退して、ナリタブライアンという新世代のモンスターが現れようとしていた時期です。

1994年にナリタブライアンは牡馬三冠と有馬記念を制覇、さらにその年にデビューしたアメリカ産の暴れ馬サンデーサイレンスの子供たちが日本競馬の歴史を塗り替えていくちょうどターニングポイントの時期です。

サンデーサイレンスという言葉を日本の競馬ファンに投げかけると、大体30分くらいはいろんな話を聞かせてくれるので知人に競馬ファンがいて話題に困ったときはその話をふってみましょう。

サンデーサイレンスはそれくらいすごい馬なのですが、今回サンデーサイレンスの話をしてしまうと話がとめどなく続いてしまうので話を戻しましょう。

オグリキャップの競馬ブームがいったん落ち着き、今度はゲームを媒介にした競馬ブームが起ころうとしていたのですが、それに勢いをつけようとして光栄が出したのがこの本です。

私はちょうど中学生、ゲーム大好きなお年頃です。

ダービースタリオンもウィニングポストもやり始めていて、競馬に非常な興味を持つようにもなっていました。

そんな時にこの本と出会います。

狩野洋一やかなざわいっせい(競馬ファンでないとわからない名前でしょうが・・・)という競馬好きのライター達がそれぞれの思い入れのある名馬を思い入れたっぷりに紹介していて、それを読んだ当時中学生の私はまさに夢をターフに駆けめぐらせたわけであります。

一巻ごとにテーマが決められていて、悲劇の名馬、追い込み馬、ダービー馬、などをまとめて紹介していました。

私が好きだったのは「逃げ馬」の巻でした。

(何巻目だったかの情報は残念ながらAmazonでは得られず・・・)

キーストン、トキノミノル、カブラヤオー、マルゼンスキー、トウショウボイーイ、アイネスフウジン、ミホノブルボン、サクラシンゲキ、ツインターボなど、競馬ファンなら一度は聞いたことのある名馬たちのお話に私は胸をワクワクさせました。

競走馬のレースの仕方は大きく分けて4つあります。

最後方から進んで、最後の直線に賭ける「追い込み」。

中団の後ろ辺りにとりついて、最終コーナー辺りから徐々に前に進出する「差し」。

中団の前目にとりついて、最終コーナーから先頭を奪いに行く「先行」。

そして最初から先頭を行く「逃げ」。

医者は心臓が悪い人には「追い込み馬」を買えと薦めるようです。

確かにそのとおりで、追い込み馬を買ったら最後の直線だけドキドキすればいいのですが、「逃げ馬」を買った場合、まずスタートがうまく行くか、そもそも先頭で走り続けられるか、最後の直線まで持つか、そしてゴールまで先頭でいられるか、とずーっとドキドキしっぱなしで心臓に悪いことこのうえありません。

でもこのずーっとドキドキが続いて逃げ切った時のしてやったり感というのはたまらないものがあります。

最近の馬ではダイワメジャーとダイワスカーレットというすごい逃げ馬兄妹がいたのですが、この2頭が私は大好きでした。

特に妹のダイワスカーレットの3歳時(2007年)のチューリップ賞と桜花賞のレースは忘れられません。

ダイワスカーレットにはウオッカという好敵手がいました。

3歳の牝馬(メスの馬、ひんばと読みます)は、春の桜花賞、オークス、秋の秋華賞という大レースの制覇を目指して走ります。

その第一戦目となるのが桜花賞のトライアルレースのチューリップ賞です。

桜花賞と同じ阪神の芝1600メートルで行われるレースは桜花賞に直結する最重要トライアルレースです。

四位洋文の乗る前年の2歳牝馬チャンピオンのウオッカ、対するは地方の笠松競馬場で天才の名を欲しいままにして中央デビュー前のオグリキャップにも乗っていた生ける伝説のジョッキー安藤勝己が乗るダイワスカーレット、ウオッカとは違い裏街道を進んで来ましたが、兄のダイワメジャーが前年にG1を2勝していて注目を浴びていました。

ファンが出した結論は、ウオッカの単勝オッズが1.4倍の1番人気、スカーレットは2.8倍の2番人気、3番手のローブデコルテは大きく離れた14.6倍。

オッズは低ければ低いほど、人気が高いことを示します。

つまりファンはこのレースはウオッカとスカーレットの2強対決だと判断したのです。

レースはスカーレットが逃げて始まりました。ウオッカはそれを見ながら中団前目でレースを進めます。

直線に入るとスカーレットが脚を伸ばして後続を引き離しにかかりますが、ウオッカもそれを黙っては見てません。

ウオッカが後ろに迫ってきたとき、安藤勝己がちらりと後ろを見てスカーレットの勢いをフワリとゆるめました(という風に見えました)、そしてウオッカはスカーレットをクビ差交わして1着、スカーレットは2着となりましたが、私には安藤勝己がウオッカの強さがどれくらいなのかを試したように見えました。

2頭が後続に付けた差は6馬身(馬6頭分の差、タイムだと1秒ほど)、2頭だけ別次元の競馬をしました。

私は桜花賞はダイワスカーレットがウオッカに勝つと確信しました。

そして迎えた桜花賞、1番人気はウオッカ、スカーレットは3番人気に落ちました。

桜花賞で不利とされる大外枠(競馬のコースは円形をしているので外を回る馬は距離を多く走らされるので一般的に不利と考えられている)も嫌われたのでしょう。

私はスカーレットが1着、ウオッカが2着に来る馬券を買いました。

レースは他に飛ばす馬がいたのでスカーレットは3番手に待機、ウオッカはさらに後ろでスカーレットを狙います。

直線に入るとスカーレット先頭、そして、ウオッカがそこに襲い掛かります。

みんなウオッカが交わすかと思ったでしょうが、そうは問屋が卸しません。

チューリップ賞でウオッカとスカーレットの実力を比べることができた安藤勝己はさらにスカーレットにギアアップを命じます。

すると、スカーレットがウオッカを突き放し、ゴール。

会心の勝利、私も会心の馬券でした。

1番びっくりしたのはウオッカに乗っていた四位洋文でしょう。

この後ウオッカは牡馬(オスの馬、ぼばと読む)のダービーに挑戦して勝利し、ダイワスカーレットは牝馬のオークスを目指しますが熱を出して回避、2頭はまた秋に再対決することになります。

そして2頭の最強牝馬の戦いが始まるのですが・・・

話が長くなるので今回はここまでにしましょう。