ジョン万次郎だけじゃない、江戸時代の漂流記『海神 孫太郎漂流記』

海神(わだつみ)

  • 書名: 『海神(わだつみ) 孫太郎漂流記』
  • 著者: 安部龍太郎
  • ISBN: 978-4087474640
  • 刊行日: 2002年7月25日
  • 発行: 集英社文庫
  • 価格: 686円(税別)
  • ページ数: 389
  • 形態: 文庫

江戸時代、南国の島に漂着した孫太郎たちの苦難の旅をつづった冒険時代小説。安部龍太郎は戦国時代のものしか書かないと思っていたので本作のような江戸時代の海を舞台にした冒険小説を書いていたのは意外だった。

仙台沖で主人公・孫太郎の乗る伊勢丸が遭難し漂流する第一部、南洋の島に漂着し地元民達の奴隷になりかけて脱出するのが第二部、そして実際に奴隷になってしまう第三部、奴隷の身から解放される第四部、バンジャルマシンでの自警団として活躍する第五部、本書は400ページ以下の構成であるがストーリー自体は上記のようにかなりボリュームがある。

色々なエピソードをそぎ落としてシェイプアップした結果、400ページ弱の内容になったのであろうが、1冊400ページの文庫3冊分くらいで孫太郎の活躍をもっと読みたかった。

物語の終わりには筆者による追記があり、その追記は物語には続きがありますよ~という含みに読めるのだが、本書の続編は出ているのだろうか。

孫太郎の漂流は実話だったようで、孫太郎の漂流のお話をまとめた『南海紀聞』という資料があるようである。Amazonで検索してみると雄松堂出版より『南海紀聞 (海外渡航記叢書 (4))』という英語の本が出てきた、1991年に出版で中古価格が3,852円(2016年2月3日時点)・・・、この値段じゃ買えない。

雄松堂出版からは海外渡航記叢書というシリーズが出ていたようであり、ジョン万次郎や大黒屋光太夫などの漂流記なども出ているが5巻で終わってしまっている、残念。

書影を見るとタイトルが英語というかアルファベット表記になっており、英語で書かれているような気もするのだが、中身は英語と日本語どちらなのだろうか。

このシリーズは再度出したら結構売れるんじゃないだろうか?名前が硬いから「ザ・シリーズ日本の漂流」に変えよう、「ザ」がすごく古めかしいのでこれからなんかいい名前を考えるとして。

「プロジェクト・漂流」でどうか、漂流はプロジェクトじゃないか。というかプロジェクトなんちゃらなんつーのも古めかしいからもっといいのを考えなきゃいけない。

さらにこの叢書を出していた雄松堂出版は丸善に吸収されて丸善雄松堂株式会社になったようだ、というかそれ一昨日のことじゃん(2016年2月1日に吸収合併されたらしい)。

この合併を機会に海外渡航記叢書を再度出してみませんかね、丸善雄松堂さん、どうかな。