フラショナールのスーツが着てみたい 『カエアンの聖衣』

カエアンの聖衣

  • 書名: 『カエアンの聖衣』
  • 原題: “THE GARMENTS OF CAEAN”
  • 著者: バリントン・J・ベイリー(Barrington J. Bayley)
  • 訳者: 冬川亘
  • ISBN: 978-4150105129
  • 刊行日: 1983年4月30日
  • 発行: ハヤカワ文庫
  • 価格: 660円(税別)
  • ページ数: 342
  • 形態: 文庫

高価なカエアン製の衣装を大量に積んだ宇宙船がとある惑星に不時着する、そのお宝を秘密裏に回収したリアルト・マストとペデル・フォーバースが本作の主人公。

ペデルはお宝の中に、カエアンの伝説の服飾家(サートリアル)であるフラショナールが幻の生地プロッシムで作ったスーツがあるのを見つける。惑星カエアンでは人間の中身よりもその人が着る衣装が重要とされ、その衣装にも不思議な力が宿っており、人々は様々な衣装を着けかえることで見た目だけでなく人間の性格や能力も変わってしまうのだという。

フラショナールのプロッシムのスーツはそのカエアン文明の生み出した最高傑作の衣装であり、ペデルはそのスーツを着ることで超人的な能力を発揮し、権力の座に登りつめようとするが、実はプロッシムという生地は知能を持っていて、人間に寄生し支配しようと企んでいたのである...

着る服で能力が変わるとまでは行かないかもしれないが、気分が変わって一種の高揚感を得ることはある。一番わかりやすいのがスーツだろうか、わたしはあまりスーツを着る機会がないのであるが、たまに着て歩いていてビルのガラスに自分の姿が映ったりすると、あ、スーツもたまにはいいかもと思う。

気取った店だとフォーマルな格好じゃなきゃだめよ、といわれたりもするし、実際仕事の面接などにビーチサンダルと短パンなどで行くと、人格が高潔で能力抜群であっても、社会性を疑われることになりおそらくというか絶対面接に受からないだろう。

もっとわかりやすい例で言えば、夏に真っ裸で道路を歩いていたら警察に捕まる、つまり現代の社会もカエアンと似たような感じにはなっているのだ。って当たり前か。

でも、このフラショナールのスーツ、着てみたいな、一度だけ。