秀吉モノの歴史小説で一番かも、曽呂利新左衛門

曽呂利 秀吉を手玉に取った男

  • 書名: 『曽呂利 秀吉を手玉に取った男』
  • 著者: 谷津矢車
  • ISBN: 978-4408554686
  • 刊行日: 2019年2月7日
  • 価格: 694円(税別)
  • 発行: 実業之日本社文庫
  • ページ数: 376
  • 形態: 文庫

不気味なカバー絵でちょっと躊躇するが、これは面白かった。

本作の主人公は曽呂利新左衛門、秀吉に御伽衆として仕えた落語の始祖とも言われる人である。

太閤秀吉への批判と読める落首を書いた犯人として曽呂利は捕まるのだが天才的な話術で罪を逃れ秀吉の配下へとちゃっかり仕官してしまう。

彼の讒言や一言によって蜂須賀小六、千利休、豊臣秀次、石川五右衛門などがどんどんと死んでいく。

豊臣陣営を混乱に陥れるのが目的なのか、果たして彼の目的は何なのか?という謎を追っていくミステリー風な作りになっている。

本作の主人公の曽呂利の人を食った会話が非常に面白かった、豊臣家の滅亡後も生きていたようなので続きが読んでみたい。

主人公は曽呂利であるが、これも広義の秀吉ものの歴史・時代小説になるだろう。
秀吉が主役かまたは主役級の多くの小説は明るい前半部(本能寺の変まで)と暗い後半部(本能寺の変以降)とだいたい決まっており、後半の文禄・慶長の役で暗さがマックスとなるのだが、本作は曽呂利の目的の謎にフォーカスが当たっているせいかあまり暗くないのもよかった。

私が読んだ秀吉ものの小説の中では一番面白かったかもしれない。

作者は谷津矢車、初めて聞いた名前だがまだ30代とのことでこれからどんどん魅力的な作品を書いていってほしい。