- 書名:『柳生陰陽剣』
- 著者:荒山徹
- ISBN: 978-4101210421
- 刊行日:2006年10月1日
- 価格:629円(税別)
- 発行:新潮文庫
- ページ数:493
- 形態:文庫
柳生新陰流の遣い手であり、陰陽師でもある主人公の柳生友景が、朝鮮妖術師と死闘を繰り広げる非常に楽しい歴史SFファンタジー作品。
豊臣秀吉の文禄・慶長の役が終わって徳川政権が打ち立てられる前後の話で、朝鮮の妖術師は文禄・慶長の役に対する復讐として日本を影から支配しようと目論むのだ。
朝鮮妖術師は巨大な蛾である「モスラ」を使い、主人公友景には男装の女剣士「オスカル」と「アンドレ」がお供をする。ヤマタノオロチも出てくるし、最後には霊的超兵器「天沼矛(あまのぬぼこ)」なんてのも出てくる。
荒唐無稽な感じもするが、さにあらず、出演陣は結構マジメにやっている(ってちょっと表現がおかしいか)ので、怪獣や超兵器が出てきてもそこまで変な感じはしない。
さらに、古代から続く日本の天皇家と朝鮮王家との「密接」な関係が物語の背後にはあり、全部が全部ホントウなのかわからない、というか、実際にどうだったのかは今では確かめるすべがないのだが、冷静に読むと結構シリアスな小説かもしれない。
この小説に出てくる「歴史的事実」がどの程度ホントウのことなのかはよくわからないが、色々な歴史解釈を下地にして、この物語が作られている。
基本的には、モスラやオスカルに興奮しながら読書を楽しめばいいが、荒山さんが言いたかったことは「歴史は支配者の都合で捻じ曲げられるし、それをのちの世の人たちがホントウなのかウソなのか確かめるスベっつーのはないのだよ」ということなのかもしれない。