先が気になるだけの、いま、会いにゆく息子タイムトラベル『時生』

トンネル 先が気になる、なんつって

  • 書名:『時生』
  • 著者:東野圭吾
  • ISBN: 978-4062751667
  • 刊行日:2005年8月12日
  • 発行:講談社文庫
  • ページ数:544
  • 形態:文庫

難病にかかった自分の息子がタイムトラベルをして、若い頃の父親(息子が生まれる前の父親)に会い、そして父親が成長するというお話。

父親と息子が同じくらいの年齢で出会うというのは重松清の『流星ワゴン』のようで、死んでしまう人間が過去にさかのぼるというのは『いま、会いにゆきます』のようでもある。

父親が出てくるお話に弱い私はちょっとだけ感動を期待して読み始めた。

確かに先の気になる展開であった(結末はわかっていたが・・・)、寝る前に読み始めたら読み終わるタイミングを逃してしまい夜更けまで読んでしまった。

タイムトラベルをして若い父親と一緒に当時の父親の恋人を助けに行くというストーリーはなかなかに面白い設定だと思う。

だが、この小説、何かが足りない。

ストーリーがどう展開するかが気になるだけで、登場人物が魅力的であったり、細かい小道具が面白かったりはしないのだ。

さらに携帯電話が普及するという事を未来の息子から知らされてそれを人に喋ったのがきっかけで就職が決まる、というギャグのような展開が一番気になった、なんだそれ。

別にうまく書いてくださいとは言わないのだけれども、もう少し地味に丁寧に色々考えて個々の登場人物のキャラクターを魅力的に書いて欲しかったな、なんてかなり勝手な事を思っている読後なのである。

あ、でも「先が気になる」という事だけに関しては結構いい線いっていましたよ。先が気になるというとこだけは。