- 書名:『ヒートアイランド』
- 著者:垣根涼介
- ISBN:978-4167686017
- 刊行日:2004年6月10日
- 発行:文春文庫
- 価格:676円(税別)
- ページ数:466
- 形態:文庫
ヤクザの経営する違法カジノを襲った3人組の1人が渋谷のストリートギャングの一員に襲われ、大金が盗まれたことから物語は始まる。
主人公は渋谷のストリートギャングのボス・アキ、そしてアキのギャングチームを追い詰めるカジノ強奪犯の柿沢と桃井が裏の主人公。
垣根涼介の物語に必須なのがチューニングを施された玄人好みの車、本作にももちろんそれが出てくる。垣根涼介はアウトロー小説ではなく、車のチューニングの話だけを書きたいのではないかと思うくらい、登場人物に車の話をさせているパートの熱量がすごい。
スパイ小説でも銃器の細かい話やウンチクが語られるし、それがスパイ小説のウリのひとつになっているのかもしれないが、垣根涼介の小説における車はスパイ小説における銃器とほぼ同じような役割を果たしている気がする。
つまり絶対に離せないのだ、垣根涼介の小説から車を引いてしまったらスパイ小説から銃器がなくなってしまうのと一緒なのだ、だからストーリーが進まない。
さらに垣根涼介の小説の主人公になるには資格があって、車が好きじゃなきゃいけないみたいなのだ、なんでってそう決まっているのである。
スパイ小説のエージェントも銃器が好きでしょ、あと探偵小説の主人公もだいたい女にもてるし、警察小説なら大体警察組織は腐敗してる、江戸モノ小説なら腐敗してるのは幕府や越後屋だし、経済小説でも政府が腐敗してたりする、私小説だと不倫してたり、まあつまり垣根涼介の小説における車というものはストーリーと切っても切れないものなのである。
マンネリの元になるかもしれないし、車が特に好きではない女性の反応とかを気にするとあまり車に関してページを割けないと普通の作家なら考えるのだろうが、垣根涼介の車に対する熱量が物凄いからなのか普段車を運転しない私も「楽しそうだな、車欲しいな」と思ってしまうくらいのパワーがある(ミニ四駆やラジコンで遊んでいた車好き少年だった下地はありますが)。
独身時代に読んでいたら車買っていたかもって思うくらい、車の話になるととにかく楽しそうなのである。
でも結婚前にこれ読んで車買ってたら結婚できなかったかも。