- 書名:『ホームレス歌人のいた冬』
- 著者:三山喬
- ISBN:978-4167838966
- 刊行日:2013/12/04
- 価格:610円(税抜)
- 発行:文藝春秋
- ページ数:276
- 形態:文庫
ちょうど読む本が無くなったので職場の近くの山下書店に入った。
渋谷にある山下書店は24時間営業をしていて、入ったのは通勤前の朝8時である。
いつも本屋に入ると文庫棚の新刊コーナーに行き、いい本はないかと探すのだが、今回はあまりピンと来るのがなかったので文庫棚を一通り見てからもう一度新刊コーナーに戻ってきた。
今日はやめようかなと思ったときに「ホームレス」の文字が目に入った。
私は常々「獄中記」に外れは無い!と思っている。
何でかと言うと、食べ物の話がとにかくグっとくるのだ。
牢獄に入っている時の楽しみと言えば食事くらいのものであり、ホトンドの人間は食べ物が好きである。
だから、刑務所で語られる食べ物の話はとにかくグッと迫ってくるのだ。
そして獄中記の次にはずれがないと思っているのが、飢餓線上をさまよう話である。
これもお話の中の大半を占めるのが食べ物の話となり、やはりグッと迫ってくるのである。
本屋に入ると獄中記に関連するワードと飢餓線上をさまようワードに私の目は反応するようになっているのだ。
だから「ホームレス」の文字が目に入り、頭の中で飢餓線上をさまようイメージが浮かび、すぐにレジに持って行った。
2008年の12月、朝日新聞の短歌のコーナーに異色の短歌が載る、何が異色かと言うと住所欄に「ホームレス」と書かれていたのである・・・
この短歌の投稿者は公田耕一と言い、それから9ヶ月あまりの間、朝日新聞の短歌コーナーに作品が載り続け、短歌愛好者の間で話題となるのである。
そして初めて投稿が載って1年を待たずして公田耕一は忽然と姿を消すのである。
その公田耕一を追ったのが今回紹介する『ホームレス歌人のいた冬』である。
著者は50歳を控えた南米帰りのフリーライターであり、フリーライター稼業をもうすぐ廃業しようと考えている。
と言っても50歳近くので再就職は難しく、どうしようか・・・悩む日々。
そしてそのフリーライター稼業の最後の仕事になるかもしれないと感じながら?公田耕一を探す「旅」に出発するのである。
公田耕一がいたと思われるのは横浜の寿町、日本3大ドヤ街のうちのひとつである。
ホームレスを体験するために野宿をしたり、ドヤに泊まったりして公田耕一が何を感じていたのかを筆者三山は探っていく。
そして公田耕一は見つかったのであろうか・・・
結末は読んでのお楽しみだが、公田耕一を探す旅は目的とは違うものを探し当てることになるとだけ言っておこう。
さわやかな結末ではない、でもズッシリと何かが深く心に落ちてくる読後感であった。