現在の貨幣価値を書いてくれる歴史モノ 『蒼き信長』

蒼き信長 上巻 新潮文庫

蒼き信長 下巻 新潮文庫

  • 書名:『蒼き信長(上下巻)』
  • 著者:安部龍太郎
  • ISBN:978-4101305233(上巻)、978-4101305240(下巻)
  • 刊行日:2012/11/28
  • 価格:上下巻ともに637円(税込)
  • 発行:新潮社
  • ページ数:367(上巻)、362(下巻)
  • 形態:文庫

今年の4月に務めている会社の決算があった。我が社はかなりの赤字を出すことがわかり、従業員全員が減給となった。

私は30,000円の減給となり、年額にすると360,000円のダウン。家のローンや生活費は削れないので妻と私のおこずかいが減らされる事となった。

私はマイナス20,000円、妻はマイナス10,000円。妻の方が減額率が低いのはもともと私より額が少なかったため。

携帯代などを引くと私のおこずかいは10,000円となった。これで何ができるのかと、暗澹たる気持ちになったがまずはこれで頑張るしかない。

減給となったことで以前考えていた転職をする気持ちも復活した。去年の秋に勉強してそのままになっているJAVAの勉強を再開し、転職に活かそうと考えた。

勉強は近所の図書館ですることになった。毎週末はその図書館に行き、JAVAの本を広げて勉強をしている。

勉強に集中できない時は図書館の本棚を見て面白そうな本が無いかを探す。そんな時に見つけたのが安部龍太郎の『蒼き信長』。

この作者は以前から気になっていたのだが、帯に私のキライな小泉純一郎がコメントしていて、「感動した!」などとのたまっている。

さらに作者の名前も安部で、これも私のキライな現在の首相を想起させるのでいい気がしなかった。

ブックオフの100円コーナーで見つけたら買おう、くらいに考えていた。

そんな時に図書館で見つけたので思い切って借りてみた。私の行っているその図書館はできてから1年くらいしか経っておらず、建物は真新しい。

だから借り方も新しい。図書館カードを端末に入れて、指定の読み取り位置に本を置くだけで借りられるのである。なんだかすごい、ツタヤみたいだ。ツタヤはこんな仕組みじゃないと思うけど。

本書は織田信長の父・織田信秀の代から話が始まり、信長が産まれ、その信長が家督を継ぎ、桶狭間の戦いを経て、尾張の隣国美濃を獲るまでの話である。

本書の特徴はなんと言ってもお金。普通、日本の歴史モノの話ではお金はもちろん出てくるのだが、お金よりもお米の方の比重が高い。国の力も経済力よりも、米の生産量である石高で決めるのが一般的である。

戦国時代の小説の中に「信長は誰某に500貫文を褒美として与えた」という記述があったとする。500貫文と言われてもピンと来ず、フーンと読み飛ばしてしまうが、本書だと「信長は誰某に500貫文(4,000万円)を褒美として与えた」という記述になる。

カッコ内に現在の貨幣価値に換算した値が書いてあるだけなのだが、一気に500貫文というお金の価値が頭に入ってくる。フーン、そうか、4,000万ももらったのか。いいな、あ、でも命かかってるのか。そうか、命かかってるならちょっと安いか?

なんてことを考えられるのである。

カッコ内に現在の貨幣価値を入れるというのは、誰もがやっていそうだが、私が読んできた中でこのように書いてあった歴史モノ小説は無かったと思う。

歴史小説では単位も当時のモノを使い、その時代の臨場感とリアルさを出そうとするので現在の単位で書いてしまうと逆に興ざめという事態も考えられるので本書のような小説が少なかったのかもしれない。

私の給料の減給分を当時の貨幣価値に換えてみると、1貫文が80,000円で計算されているので30,000円 ÷ 80,000円=0.375貫文となる。

0.375貫文と聞くとホトンド減給されていない気になる。

でもそういう気になるのは一瞬で、やっぱり気分は暗澹となる。

早く次の仕事を見つけよう。