- 書名:『タフの方舟 1 禍つ星』、『タフの方舟 2 天の果実』
- 著者:ジョージ・R・R・マーティン
- 訳者:酒井昭伸
- ISBN:978-4150115111、978-4150115166
- 刊行日:2005年4月30日、2005年5月20日
- 発行:ハヤカワ文庫SF
- 価格:840円、700円(ともに税別)
- ページ数:479、351
- 形態:文庫
大昔の失われた技術で作られた巨大な宇宙船・方舟号(全長30キロメートルくらいある)に乗るのは船長のタフとその飼い猫達。
方舟号には宇宙の様々な種類の生物のDNA情報が蓄積され、そのDNAを持つ動物を短時間で「創造」する事ができる。
夢のような船である。
タフは自称「環境エンジニア」であり、失われた古代のクローン技術を使い、さまざまな生物を作り出しトラブルを解決する。困っている惑星があると、そこにフラリと”タフ”と方舟号は現れる。そして法外と思われる値段をふっかけて笑ゥせぇるすまんのように「私に解決出来ますが、ドーン!」、と迫る。
最初は「そんなにお金払えない!高い!」と言っていた困っている惑星の人々も結局その金を払う事になってしまう。
という連作短編集が本作である。
SFの装いをしているが、中身はいわゆる名探偵モノに近い。
ちょっと変わった刑事か探偵(古畑任三郎やとかポワロみたいな)が、まわりをヒヤヒヤさせながら事件を解決する、というようなあれである。
また、酒井昭伸氏の翻訳がいいのか、出てくる生物の名前が面白くてかっこいい。
艨艟(もうどう)とか、鋼牙(こうが)とか、『獣の奏者』に出てくる闘蛇を思い出したが、あれより名前のレパートリーというか引き出しが多い気がする。実際の英語版ではどんな名前になっているのだろうか。
「もうどう」なんて、どうやって訳したらその名前が出てくるのか、なんかよくわからんけどスゴイ化け物感ってのが出てて、スゲーなー。スゲーなーってプロに失礼か。
酒井昭伸氏は私の大好きなハイペリオンシリーズも訳しているので、この人の翻訳が私は好きなのだろう、たぶん
巻末の解説で酒井氏も書いているが、ハイペリオンが好きな方であれば本作も好きになること請け合いである、カヌーとかアイネイアーとかシュライクは出てこないけど。
このシリーズの唯一の欠点というか大いなる不満点は、まだタフの方舟シリーズは2巻までしか出ていないということである、ページ数で言うと800ページちょっとだ。連作の大SFシリーズになる余地があるのに残念な事である。
今後、大SFシリーズに育っていくことを期待したいが、作者のジョージ・R・R・マーティンは大人気シリーズである『ゲーム・オブ・スローン』(氷と炎の歌)で忙しそうなので酒井さんが続編を代わりに書いてくれないだろうか、どうかな、やっぱダメかな。