ズームイン朝と山本一力『くじら組』

くじら組

  • 書名:『くじら組』
  • 著者:山本一力
  • ISBN: 978-41676701777
  • 刊行日:2012年7月10日
  • 価格:629円(税別)
  • 発行:文春文庫
  • ページ数:412
  • 形態:文庫

去年の終わりに、義理の父から読まなくなった本を大量にもらったのだが、その中に入っていたのが本作品。

山本一力との出会いは、今から10年くらい前だろうか、何かの賞を受賞して日本テレビの『ズームイン!!朝!』に家族で出演していたのを見たのが最初だった。

自転車で日本テレビまでやってきました、と清々しく話していたおじさんが山本一力だった。

何で朝の情報番組に自転車でやってきたのかは謎だったが、普通のおじさんが家族で出演という事態が頭の片隅に残った。

それから本屋で見かけるたびに気になっていたのだが、このたび義理の父からの縁により遂に読むこととなった。

舞台は幕末の土佐藩。

黒船が土佐沖を走っているのをくじらを捕る漁師たちが見つける。

その漁師たちの集団であるくじら組が江戸に上るまでのお話である。

あらすじとしてはなんてことはない、先が気になるだとか、驚天動地の結末などはない。

だが、いちいち描写が細かく丁寧だ。

最近の歴史・時代小説に慣れていた私は、最初は重いなと思ってしまったが、

その丁寧な語り口が、数年寝かされた古酒のような味わいを醸し出すのである。

なかなか進まない話に、最初は欲求不満となるが徐々にその物語世界に引き込まれていく。丁寧な描写が物語世界の中へ読者を誘っていくのである。

山本一力を毎日読みたいとは思わないが、年に数回読みたくなる作家になりそうだ。