朝鮮戦争の話だけど内灘の話が気になるのだ 『朝鮮戦争』

朝鮮戦争

  • 書名: 『朝鮮戦争(上) 血流の山河』、『朝鮮戦争(下) 慟哭の曠野』
  • 著者: 芝豪
  • ISBN: 978-4062779692(上)、978-4062779706(下)
  • 刊行日: 2014年12月12日
  • 発行: 文春文庫
  • 価格: 各1,060円(税別)
  • ページ数: 672(上)、640(下)
  • 形態: 文庫

非常にストレートな書名の通り、本書は朝鮮戦争を描いた小説である。1950年6月の開戦から、1953年7月の休戦までの戦いの流れが北側の指導者、南側の指導者、そして普通の市民の視点から描かれる。

主な登場人物達は、北朝鮮の指導者である金日成、中国の指導者・毛沢東、中国軍の将軍・彭徳懐、ソ連のスターリン、アメリカ大統領トルーマン、アメリカ軍の将軍マッカーサー、リッジウェイ、ヴァン・フリート、韓国軍の白善燁(ペク・ソニョップ)に丁一権(チョン・イルグォン)、日本の首相吉田茂などである。

そこに蕗原謙二と安徳河(アンドクハ)という架空の人物の話が挿入され物語は進んでいく。

朝鮮戦争は、まず北朝鮮軍がソウルを占領し、破竹の勢いで半島南の釜山まで迫るが、そこからアメリカを中心とした連合軍の反撃が始まり、連合軍はソウルを奪回、戦線を中国国境近くまで押し返すのだが、そこで中国軍が登場し、戦線は現在の38度線付近で膠着し、休戦となる。

日本の隣の国の出来事であるが、私は朝鮮戦争については38度線と板門店いう言葉くらいしか知らなかった。ベトナム戦争の前に米国とソ連・中国軍が代理戦争をした冷戦の始まり、みたいな認識だった。

この戦争、きっかけの多くを作ったのは日本である。

日本による1910年の韓国併合から太平洋戦争に日本が負けるまでの35年の間、朝鮮半島は日本によって占領されていた。しかし太平洋戦争に日本が負けたため日本軍が朝鮮半島から撤退し、半島はアメリカとソ連を中心とする連合国による統治を受けることになる。

半島の北側はソ連、南側はアメリカである。これが朝鮮民主主義人民共和国と大韓民国のベースになっていく。そしてどちらも南北統一を目指していたため、この朝鮮戦争が起きるのである。

登場人物たちが小説のように喋るのと、架空の人物たちも出てくるので一応は小説であるものの、架空の人物が出てくる部分以外はノンフィクション的な雰囲気が強い。

戦記モノなので、いわゆる軍隊における常識みたいな単語がいっぱい出てくるのだが、一番困ったのが師団、連隊、大隊、みたいな部隊の単位の名前である。

日本の歴史小説などを読んでいると戦闘に参加した兵隊たちの人数が足軽5,000人とか、鉄砲隊300人とか、騎馬隊500人とか具体的な数で説明されるのでわかりやすいのだが、本書は近代戦を描いているためか、出てくる兵数の単位が単純な人数ではなく師団とか連隊とかの単位になっているのだ。

で、これがよくわからない。上巻の最初の方に師団だと何人くらいの兵隊がいますよ、連隊だと何人くらいですよ、っていう説明が出ていたのだが、あとから探しても見つからなかった。

だから、wikipediaで調べたよ、アタシは。師団は大体1万から2万、で連隊は5,000人くらい?、大隊はだいたい・・・まあ細かいところは自分で調べて、ある程度頭に入れとくといいでしょう。

正しいかどうかはわからないけど、ともかく次のWikipedia(軍隊の編制)が参考になります。

本書を読む場合はその軍隊の構成人数を把握してないと、なんだかわけのわからないことになるので注意です。

朝鮮半島の地名は少し知っていても位置関係がよくわからず、なんで地図が出てこないんだろうな〜と思ってたら、上巻の巻末に地図がたくさん出ていたのに気づいた、上巻を読み終わった後に。もちろん下巻も同様に巻末に地図がたくさんくっついているので読む前にじっくり眺めておくと非常にわかりやすい。

本書の舞台は朝鮮半島だが、たまに北京の毛沢東、モスクワのスターリンの話が挿入され、連合軍の前線基地ともいうべき日本国内の動きも挿入される。

米軍に依頼されて武器を作る話であるとか、日本から掃海艇が出されたという話も、で、その総括とも言うべきなのが石川県の内灘の話である。

下巻の最後の方に出てくる石川県の内灘の闘争は、なんというか、救いがないお話。で、この内灘ってどこかで聞いた名前だなと思っていたら、私は以前に行ったことがあったのを思い出した、鉄板道路ってなんだろうかと思ったがそういうことだったのか。

内灘についてはこのブログで以前に書いた( 「 とにかく電車に乗りたかったのだ 『ヨーロッパ鉄道旅ってクセになる! 国境を陸路で越えて10カ国』 」)、あの時は、鉄板道路と聞いて太平洋戦争か明治維新の史跡かと思ったが、それよりも新しい朝鮮戦争時代の史跡だったのである。

この部分には本書の一応の主人公である蕗原謙二も絡んでくるので、筆者はこの話を一番書きたかったのかもしれない。

だって、この小説で挿話だけなんか異質なんである、なんだか。