欲望の器が小さくなる『アヘン王国潜入記』

疑惑の片栗粉。本書とはあまり関係ない

  • 書名:『アヘン王国潜入記』
  • 著者:高野秀行
  • ISBN: 978-4087461381
  • 刊行日:2007年3月
  • 発行:集英社文庫
  • ページ数:387
  • 形態:文庫

私が高野秀行の著作を初めて読んだのが本書。確か新刊書店でジャケ買いをしたように記憶している。

ビルマ(ミャンマー)の山岳地帯に住んでいる少数民族のワ族によってアヘンの栽培が行われていると知った著者がケシの栽培で生計を立てる村に単身乗り込み、ワ族とともにアヘンを作りアヘン中毒になってしまうお話である。(ワ族はビルマ北部のシャン州の州内州であるワ州に住んでいる)

軍事政権のビルマ(ミャンマー)には反政府勢力が多数存在し、その一つがワ州(ミャンマーの中国寄りの地帯で中国政府の影響が強いワ州連合軍の支配化にある)の反政府勢力である。

ワ州は麻薬の密造で名高い(悪名高い?)ゴールデントライアングルの一角を成していて、気候がアヘンを作るためのケシの栽培に適し、ケシをすぐに現金にすることができるので住民の多くはケシの栽培に従事している。

反政府にアヘンと聞くと重々しい犯罪のニオイがしてくるし、さらに軍事政権となるとビルマ(ミャンマー)の民主化だとかいう小難しい話が出てくるのではないかと思うが、そこまで小難しい理屈は出てこないので安心して読めるだろう。

またアヘンを吸う描写(というかアヘン中毒になってしまう)も見られ興味深い、とくに私はアヘンを吸ってみたいと強く思うわけではないがアヘンを吸うと「欲望の器が小さくなる」という説明にフーンと納得するのであった。

私は16歳くらいから20歳くらいまでの間の数年間、何か変な感情というかなんだかわからないが、いきなりトリップ(トリップと呼ぶのか、なんつーかいきなり脳の中に何かがうわーっと放出されるような感じ、でもなんか違う、なんて説明すればいいんだ)をするようなことがあった。

薬はやっていなかったし、何が原因なのかいまだにわからないのだが、たとえば歩いていたりゲームをしていたりするといきなりグワーっと何か得体の知れないというかなんというか何かが頭に上ってきて、それでトリップと言うか、自分が世の中で一番悲しい存在である、みたいな感覚に襲われて、それでその時の悩みがぱあっと消えるのだ、なんだかわからないが、とにかくそういう状態に30秒くらいおちいり、それで徐々にその感覚は引いていくのだ。

その時の感覚みたいなものをどう言葉にしていいのかわからず、当時は「バッドトリップ」と自分では呼んでいた。

で、このアヘン王国潜入記を読んだところ、アヘンをやると欲望の器が小さくなるという記述があり、私のあの「バッドトリップ」と似ているなと思ったのだ。

あの私の「バッドトリップ」はアヘンだったのか、アヘンと同じような脳内物質が大量に分泌されていたのだろうか、一体あれはなんだったんだ。