- 書名:『問題温泉』
- 著者:椎名誠
- ISBN: 978-4167334192
- 刊行日:2002年12月10日
- 価格:476円(税別)
- 発行:文春文庫
- ページ数:305
- 形態:文庫
本書は「SF作家」椎名誠のSF短編集である。椎名誠はエッセイが得意という印象が強いと思うがSFも非常にうまい。
『武装島田倉庫』、『水域』、『アド・バード』などの世界戦争後の荒廃した世界を描いた世紀末SFモノ、そして本書の中に入っているようなちょっと怖ろしい短編モノなど、結構な数のSFを書いている。
そして、椎名誠のSF短編モノの中でも一番面白いと私が思っているのは「管水母」(くだくらげ、『みるなの木』収録)という中国人が喋る日本語による一人語りのふざけたお話なのだが、異常に面白い、気になる方は読んでみて。
で、その「管水母」にかなり似通った感じのお話が「鳥人口伝」という名前で本書に入っていてかなりよくできている。
中国人が喋る一人語り小説(あくまで日本人からの中国人が日本語を喋ったらこうなるというようなステレオタイプなイメージだけど)選手権みたいなのがあったら(そんな選手権ないだろうけど)、椎名誠の中国人一人語りSFは確実に上位に来るであろう。
物語の面白さというのはアイディアやストーリー展開、伏線の張り方みたいなのが重要みたいに思われがちだけども、もっと重要なのは出てくる人間つーか登場人物が何をどう喋るかっつーことなんだよ、と私は常々思っているのだがそのことを椎名誠の中国人一人語りSFは再確認させてくれる。
そういえば中国人が「アイヤー」と驚く、というのを昔から日本のドラマやマンガなどで見ていたが、以前吉祥寺のラーメン屋で働く中国人のおばさんが「アイヤー」と驚いていたのを見て私は感動した。
テレビと一緒だと思ったのだ。