- 書名: 『アニメと戦争』
- 著者: 藤津亮太
- ISBN: 978-4535587533
- 刊行日: 2021年2月28日
- 発行: 日本評論社
- 価格: 2000円(税別)
- ページ数: 261
- 形態: ソフトカバー
私が小学生1年生になった1987年春、わが家にLD(レーザーディスク)デッキと新しいテレビがやってきた。
それまで私はテレビを観ることを禁止されていたが、LDデッキと新しいテレビの到着によりテレビ解禁となりLDも買ってもらえるようになった。
初めて買ってもらったLDはディズニーのアニメだった気がするが小学校3、4年になるとディズニーにはメカが足りないので飽きてきた。
そんな時に買ってもらったのがガンダムの『ポケットの中の戦争』と『逆襲のシャア』だった。
買ってもらったガンダムのLDをセリフを覚えるくらい何回も観た。
第二次世界大戦時の日本・ドイツ・アメリカがごっちゃに投影された「連邦軍」と「ジオン軍」というフィクションが少年の私には妙なリアルさ・ホントっぽさを感じさせてくれた。
それからはガンダムのプラモデルも作ったし、ガンダムを題材にしたゲームも結構やってきた。
でもガンダムを楽しんでる自分もいる一方で、現実世界の戦争はイヤなのに、なんでフィクションの中の戦争はOKなのか?という疑問もあった。
ガンダムを観たり楽しんだりすることへの罪悪感が私の中に芽生え、できれば”ガンダムが好き”であるということを他人に知られたくないという想いも大きくなっていった。
私の本棚やKindleにガンダムの本が並んでいるという状態を他人に見られるというのは、ベッドの下にあるエロ本を誰かに見られるよりも恥ずかしい、というより知られたくない。
「戦争ごっこ」を好む人間であるということを他人に知られるのがイヤなのだ。
実際に自分が戦争の渦中に投げ込まれるのはイヤなクセに「戦争ごっこ」は平気なの?と思われたくないし、実際に自分がそういう人間であるということも認めたくない。
誰かに好きな映画とかアニメ作品とかを聞かれたとしてもガンダムが好きですなんて事は言えないし言ったことも無いと思う(たぶん)。
同年代の友人とのお酒の席で話題が無くなるとガンダムの話題が出ることもあったが、あくまでもたしなみ程度に知ってるよって感じでごまかしてきた。
そんな時に『本の雑誌』に本書が取り上げられていたので、自分の中のアンビバレンツな気持ち的なナニかについて書かれているかと思って買ってみた。
本書は日本のアニメの中で戦争(第二次世界大戦)がどのように扱われてきたのかが書かれている。
主に扱っている作品は『桃太郎 海の神兵』、『ゲゲゲの鬼太郎』、『宇宙戦艦ヤマト』、『パトレイバー2』。
表紙にザクが描かれ帯には富野由悠季の「戦争を見たがる心、したがる心とは何か…」という文が書かれているので、『ガンダム』を中心に「アニメと戦争」を論じていると思ったのだがそうではなかった。
本書はそこには踏み込まずに、まずは日本のアニメにおける戦争の描き方を丁寧に追った感じで、心に踏み込むのは次!という感じだった。
本書の冒頭にある寺山修司の文が非常に気になった。
戦争の本質は、実は少年たちの「戦争ごっこ」の中に根差している。十歳や十五歳の少年が、戦争ファンであるあいだ戦争はなくならない。
少年たちが成長するように、彼らの「戦争」もまた成長していくのだから。
-寺山修司『さかさま世界史』より
これがホントウなのであれば私は『ガンダム』への想いを断ち切らなくてはならない。
ああ、困った。