新・さ迷える転職大変記 第10話 「おたく、何の会社ですか?」

早く帰りたい

かなり間が開いてしまったが、今回も唐突に始まる。

家を買う話は順調に進んでいく

仕事と家のことで精神的にきつくなったので心療内科に行き始めた、心はすこし楽になったが、会社は経営が苦しいようで社員への締め付けが厳しくなってきた。

転職が先か倒産が先か、みたいな気分になり転職活動が進まない焦りがドンドンと募ってくるが、ワケありの私でもお金を借りられそうだということになりローンの面接に行くことになった。

お金を貸してくれそうなところは大手都市銀行系列のローン会社である。都市銀行系列なのでどの支店でも貸してくれるのかと思ったがそういうものでもなく、知り合いの工務店の近くの郊外の私鉄沿線にある支店での面接となった。

私はスーツを着て、妻と一緒に転職の面接よりもある意味緊張しつつ郊外の都市銀行の支店に隣接するローン会社に行った。

が、工務店側とある程度話が進んでいるらしく、顔合わせという感じで無事にローンの面接は終わった。

おそらく、お金は借りられるであろう、なので、土地を買いそこに家を建てることになる。

だから、転職活動は頑張らなければならないし、さらに転職が決まるまでは今の会社がつぶれないように頑張らなければならない。

なんだかプレッシャーがさらに重くなってきた。

仕事は拘束時間が長くなる

多くの会社には繁忙期があるようだが、私の会社の繁忙期は秋だった。

主力製品2個を毎年この季節にリニューアルしてリリースする、そのためのパッケージやらチラシやらを作るのだが、それはほぼ私の仕事であった。

売れる売れないはパッケージ次第!という空気が社内には色濃かったのでダメ出しがとにかく多い、さらに昨日OKが出たから印刷会社に出稿したのに、今日になり「やっぱやり直して、印刷会社には待ってもらって」みたいなこともあり、印刷会社との連絡も私の仕事だったのでその連絡に時間を取られ作業が進まない、というような事態になることもあった。

1日中印刷会社とのやり取りで終わってしまい、作業が全く進まない日もかなり多かった。

心療内科でもらえる薬のおかげでそこまで最悪というところまではいっていなかったが、徐々に心が心療内科に行く前の状態に戻りつつあるような気がしていた。

土地を買って家が建ち始めるが、私が採用した後輩が辞める

仕事は大変だったが、家の話は順調に進み無事にお金を借りて土地も購入でき、工務店が建設工事に入った。

だが、仕事が遅くまで続き家の新築のことはお金のことも含めて妻にまかせっきりという状態が続いていたので何度か妻とケンカをした。

心の平衡状態はなんとか保っているというか、いろいろなプレッシャーの中でなんとか平衡を保っているという感じ。つまり心配事がひとつじゃなくてたくさんありすぎて、それらが上から下からバランスよく圧力をかけて来ているので崩れずに済んでいるという感じ。

で、そんな中、2年前に私が面接して採用を推した後輩から話があると昼ごはんに誘われた。

その後輩は、最初はバイトとして入社していて、社員になって1年くらい経っていた。会社の先も見えないし、自分の給料も安い(手取りで17万くらい)ので辞めることにした、とのこと。

オレより先か・・・と思ったし、そうも言ったが、しょうがない、その後輩は私より若いし家族もいないので簡単にやめることができる。

昼ごはんのメインの話題は後輩の新しい仕事よりも、私の悩みになってしまって、その後輩から励まされる始末である。

おたく、何の会社ですか?

そして、また面接をすることとなった。

所在地は渋谷の道玄坂上、会社から歩くと15分くらいのところである。

あちらから興味通知オファーというのが来て、「ありがとうございます、そちらの会社に入った場合私はどんな仕事をするんでしょう?」と返したら、「じゃあお会ってお話ししませんか?」と返されたので、近いし会ってみるかとなったのである。

転職サイトで見たところその会社はWeb系である、つまり何をやってるかよくわからない。だから、面接当日にどんな会社か教えてくれるのだろう。

私は面接というよりも、軽い雑談のようなつもりであった。

面談日時は会社の昼休みに合わせた。

会社をいつものラフな格好(パーカーだったが一応中はシャツ、でも下はジーンズ)で出て道玄坂上に向かった。

会社は道玄坂上交番の奥にある大きなビルの中にあった、そこの何階だかに上がるとキレイなエントランス。

笑顔を絶やさない人事の女性がやってきた、彼女がおそらく転職サイトで連絡をした人間だろう。

彼女に履歴書を渡すと、デザイナ?のような男性が登場した。

まず自己紹介をしてくれと言われたので、自己紹介と職務経歴の紹介をしたが、この面談ってまずは人事と軽い雑談をするのが目的じゃなかったっけと頭のなかにクエスチョンマークが出てきた。

で、私の番が終わるとデザイナ男性が

「私らの会社が何やってるか知ってますか?」

と聞いてきた。

いや、その説明を受けに来たんだけど、と思ったが

「Web系ですよね?」

「どんな?」

「よく知りません」

「あなたね、面接に来るのなら普通会社調べてくるでしょう、私たちはインターネットを世界に広めるための仕事をしてるんです!その理念に共感できない仲間はいりません!」

「そうですね」

面接が終了した。

どんな会社かの説明も何もないが、会社の雰囲気はよくわかった。

あと、何やっているかも。

プロバイダだ、たぶん。つまりイケイケな社長がいて、それについてくるイケイケな営業部隊がいて、それらのまわりにいろんな部署がぶらさがっているのだ。

それで私はおそらくそのぶらさがりの中のデザイン部みたいなとこで、暗い顔した上司にこき使われるはずである。

よかった、今の会社の方がいい。

面接は破談となったが、いい経験はした。

まず、面接って言うか雑談ですよ、ハハハみたいなメール内容であっても、一応相手の会社のことは調べておいた方が話がこじれない。

でも今回の場合はとくに行きたいという気持ちはなかったので、その気持ちの再確認ができたから下手に調べないでよかった。

お互い時間の無駄だったのではという疑いも大きいが、私にはいい経験になった。

その後は何事もなかったかのように会社に戻り、業務を再開した、面接はすぐに終わったのでホントウに昼休み1時間分でなんとかなった。

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