新・さ迷える転職大変記 第13話 「早く転職したいけど、そんなすぐには決まらない」

桜

赤字のために減給をされ、これはもうやばいぞ、会社なくなるかも、急がなきゃということになり、転職活動を再開することにした、というのが前回までのお話。

営業職の2人が去り、私はビデオカメラを売る

既に前回の話でも書いたが、辞める事になった営業の2人(男性と女性)が会社を去っていった。営業職の2人とは製品パッケージや製品サイトの作成でよく一緒に仕事をしていたので、寂しかった。

従業員の数も20人に満たない会社なので2人抜けると、いやその前に2人抜けてるから4人抜けてるのか。4人いなくなるともうそりゃ半分くらい逃げた、みたいに見えるのだ、残された側からすると。

その分新入社員が2人増えたから差し引きで2人減ったわけであるけど事情を知らない新入社員2人というのはもうどうにも、なんというか、心が重い。

減給されたので年に一度の夏のボーナスも今年はないだろうと思い、数年前に購入したビデオカメラを売ることにした。

その年は会社が社長によると設立以来一番儲かったという年だった。ボーナスも多く出たのだ。まあ本当はそれが業績が下降線になるターニングポイントだったようにも思うのだがその時はそんなことには気づかない。

お金が入ったから社員旅行にも行こうかとなり、みんなで海外まで旅行に行ったが、そんなことしてる場合ではなかったのだ。楽しかったけど。

私は結婚もしていなかったので、以前より欲しかったSONYの民生用ビデオカメラの一番高いやつを購入した。結構いい値段した、私の給料くらいした。

それで短編の自主映画でも撮ろうと思っていたが、その後に結婚をしてそれどころじゃなくなった。というか働いていたら短編映画作るのって大変です。

結局そのカメラで撮影したのは友人の知り合いのライブ映像くらいであった。ホントなんて贅沢な使い方。息子をそれで撮影しようと思ったけど、結局撮らなかった、ごめんよ息子。

で、そのホトンド使っていないビデオカメラを売り払うことにした。金額は購入時の3分の2くらいであった、懐は少し暖かくなったけど、なんというか私の大切なものがどんどんなくなっていくようなホントウに心細い気持ちになった。

そんな中Java SE 7 Bronzeに受かる

以前適当に受験して返り討ちにあった、Java SE 7 Bronzeの資格に遂に合格した。減給されて転職を頑張ろうと決めて私もちょっと頑張ったのだ。

なんというか、絶望の中の希望の一筋といったら言いすぎだけど、悪いこと続きの中では一番うれしい出来事であった。

家の購入もうれしい出来事ではあるのだが、まだローン返済が始まったばかりで私たちのものではない、収入が無くなれば私たちの手から離れていってしまう。

その点、資格なら収入がなくなっても離れて行ったりはしない。

その資格が仕事で実際に使えるのかというのは疑問の残るところではあるが、自分の自信と面接でこれを頑張りましたと具体的なものとして言えるのがでかい。

半年ぶりの面接が決まる

そして、次の面接が決まった。

前の年の11月に面接に行ったのが最後、面接が決まったのは7月だったので半年以上のブランクとなる。その会社は目黒にある開発会社であった、スマホのアプリなどを開発しているようだ。

おそらく給料は下がるだろうなとは思ったが、半年以上の面接のブランクを埋めなくてはならないし、Java SE 7 Bronzeの資格がその会社からどのような捉え方をされるのかを確かめなくてはならないので行ってみることにした。

あと、少人数でアットホームな感じの雰囲気だろうなと思ったのもある、圧迫面接みたいなのはしないだろうし、練習にはちょうどいい。

会社を早めに出て、渋谷駅から山手線に乗って目黒へ行きその会社をたずねた。

駅から歩いて5分くらいの大きめのマンションの中に事務所があった、普通に住んでる人の住居と事務所などが混じって存在してるようなところだった。

経理と人事を担当していると思われる、副社長的な40歳くらいのおっとりした雰囲気の男性と面接をする。

その男性よりも少し若い、というか私よりも若そうな社長もすぐに出てきた、気さくな感じで、少人数でアットホームという予想は当たった。

自社開発アプリを作りつつも、請負で大きなプロジェクトに一部の社員を派遣するような感じの業務を行っているとのこと。

Java SE 7 Bronzeを取った話をするが、反応は思ったよりも悪くなかった、その資格自体を評価するというよりも、やる気あるんですね、みたいな感じだった。つまり、マイナスにはならない感じだった。

社長はかなりマジメな感じで、私をどこの部署に配属させようか真剣に悩んでくれていた。未経験というのと、家族がいるために私が要求する給料が高いというのが私をどうしようか悩む理由とのことだった。

現状の私はプログラムの技術はほぼ0で、デザインができるという状態。なので、デザインの実績を活かしつつプログラミングを頑張れるような都合のいい現場があれば採用はできるかもということだった。

面接自体は他の社員が作業している部屋にあるソファーで行われ、面接の話は全員に聞こえている感じだった。

社長が私に適任の仕事があるかどうかという話を、他の社員にも気軽に聞いたりしていて風通しはよさそう。

目黒という立地のせいか、渋谷のIT系のようなかっこつけた感じが全くなくて、ここで働けたらいいなとは思った。

よろしくお願いしますと言って面接は終わった。

希望額と合わず落ちる

すぐに面接の結果が来た。

というか、まあわかっていたことだが、希望額と合わず今回はごめんなさいということだった。

メールをしてきたのは、経理と人事担当の感じのいいおっとりした副社長っぽい人だったので、なんでダメだったのか、そいで私が薄給でもいいですと言った場合いくらもらえることになるかを返信で聞いてみた。

すぐに丁寧なメールが来た。

見込み残業代も含めて、今の私の税込み給料から10万下がるとのことだった。希望額と出せる額に10万の差があれば採用はできない、私の希望額は減給された税込み給料と同じ額だったのだから。

減給されても現状の自分の給料が結構高めであるということと、Java SE 7 Bronzeはマイナスにはならないということがわかっただけでもよしとしようと思った。

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新・さ迷える転職大変記 第12話 「そして減給、そして決意」

減給

またまた、かなり間が開いてしまったが、今回も唐突にいきなり始まる。書いていることがもう3年前くらいの出来事で記憶も薄れているし、転職について書く!みたいな気持ちも薄くなってしまっているような気がするが、こういうのは最後まで終わらせないといけない。

心療内科が終わって少しだけ気持ちが楽になっていた頃、転職活動を始めてから1年半くらいが経った年の初めである。年上の同僚が朝から上司に怒鳴られていた、大丈夫かなと思って夜に社内に誰もいなくなってから話しかけると、最近心療内科に通っていると言われる。彼は最近行き始めたようだ、私が心療内科に行っていた話をする。

お互い頑張りましょうねと言ってその日は帰ったが、彼も転職活動を始めているのだろう。私より年齢が5歳くらい上なので早いに越したことはない。

彼は営業職のため、上司の風圧を私より強く受けているようでかなり辛そうだった。

2人が辞めていき、新しい家に引っ越す

前に会社を辞めると私に相談してきた同僚が遂に会社を辞めることになった、彼女と同時期に入ったアルバイトの女性も結婚が決まったという理由だったが二人とも同じ日に辞めて行った。

私のほうが先に会社を辞めることを決心していたのに先に2人に辞められたこととなる。スピードを競っているわけではないが、2人が私より早く安全圏に逃れたように思え、取り残されたような気持ちが強くなる。

そんな中でも私の家の購入の話は順調に進み、遂に引っ越すこととなった。井の頭沿線から京王線沿線への引越しである。

あの精神状態で新しい家に引っ越すことができたのは私のおかげではなく、妻の頑張りのおかげであった。ありがとう。

でも、精神状態があまりよくない中で新しい街に引っ越すとなんというか心寒いというか不安な気持ちの方が強くなる。

今はそんなことないが、知らない街は誰もが私に冷たいような気がして、引っ越してきてすぐの日曜の午後に冷たい雨の中を1人で街を歩いて、不安な気持ちがすごく強くなった暗い思い出がある、引っ越してきた当時の私の気持ちはそんな感じだった。

「不安」、この先どうなるんだろうという気持ちである。

引っ越してきたのは春の始まりくらいの頃だったが、私の心は春とは程遠いような気分だった。

遂に減給

そしてなんと4月になって、我が社に新人が2人入ってきた。新卒の女性と男性である。

会社の経営がとても苦しいはずなのに大丈夫なのか?という空気が社員の間に色濃く流れるが、新人2人はそのようなことに気づかず、というかそんなこと言えないよ。

社内の空気は新人の教育どうすんだ?何を教えるんだ?みたいになる、つまり既にいる社員たちは新人を持て余す感じになった。

彼らを育てているヒマなんてないんだよという気持ちと、彼らに申し訳ない気持ちである。女性は営業、男性は開発に入ることとなった。しかし会社の余裕がないため、教育はかなりなおざりとなる。

つまりほっぽらかしである、先が見えない状況で後輩を教育するというのはかなり難しい、というか余裕がないんである。さらに先輩方つまり我々は彼らへのアドバイスが空虚なのを知っているのでろくなことが言えない。

常に「この会社で頑張るなら他の会社探したほうがいいよ」という言葉を飲み下しつつアドバイスなんてできるか!

私は会社のこと考えなくていいから自分の将来のために頑張れみたいなことを遠まわしに言っていたような気がする。まあ若いから私よりも何とかなるはず!と自分の良心をごまかしていた。

そして遂にその年の給与の改定に繋がる、4月の上司との面談がやってきた。

知っての通り会社の業績は悪い、だからみんなに飲んでもらいたいことがあるというようなことを言われた。

つまりは減給である、私は4万の減給である。上司からは「5万減給したいけど、4万でどうか?」と言われた。そしてその後上司が2万で頑張ってみると言われて、上司が社長と相談の結果3万の減給となった。

減給の理由は業績の悪化である、私の成績どうこうではない。金がないようなのである。

4月に新人を採った直後に減給となるのはかなり危ない、転職活動は前年の終わりにやって以来凍結していたが、家に帰って妻と相談してやはり本気で転職活動をしようと決めた。

辞めたいと思って転職活動をしていたが、まだ給料は下がっていなかったので本気度が低かった、しかし本当に転職しないとやばいという気持ちになってきた。

また2人辞めることに

その年の初めくらいに私に心療内科に行ってるんですと言ってきた年上の同僚が辞めることになった、さらにその前後にその同僚と同じ営業の女性も辞めることになった。

彼女は3年前に入ってきて逆境の中かなり頑張っていたが、みんなが減給となり会社に見切りをつけたのであろう。2人とも次が決まっての転職だったので清々しい顔をしていた。

心療内科に行っていた同僚は、一時はどうなるのかと思っていたが、寂しい気持ちも強かったが最悪の結果にならずホッとした。櫛が欠けるような感じで半年あまりで会社から4人の人間が去って行ったのである。

さらにこのまま売り上げが上がらないと8月に会社のお金がショートすると聞かされる、半分脅しもあるかもしれないが、これはやばい。

私も、もうホントに後がないという感じなってきた。

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凱旋門賞にホントに勝ちたいなら本気でやろうよ、でも凱旋門賞ってホントに欲しい?

中山競馬場スタンド from 「写真AC」

今年(2017年)も凱旋門賞に果敢に挑戦したサトノダイヤモンドとサトノノブレスの日本勢は見事に負けた。

同日のJRAのGIレース・スプリンターズSの売り上げが125億円、JRAが発売した日本国内分の凱旋門賞の売り上げは34億円となり、去年(2016年)の売り上げは前者が127億円で微減、後者は41億円で20%減となった。

今年は前哨戦のフォワ賞でエース格のサトノダイヤモンドが惨敗してしまい本番も危ういというムードが濃かったため、売り上げ減となったのだろう。同日のスプリンターズSの売り上げがほとんど変わらなかったことを見るとそういうことなのだろう。

凱旋門賞で一番有利だと言われている「3歳牝馬」のエネイブルが直線で楽に抜け出したのを見てやっぱりなと思ったのと同時に、日本の中距離層のエース格の牡馬を連れて行く日本勢の挑戦スタイルをこのまま続けて勝てるのかしら?と強く思った。

だって、有利と言われている3歳牝馬が日本勢として挑戦した例は2014年のハープスターしかいないのだ。

実際、ハープスターは同じ年に出走した牡馬のジャスタウェイとゴールドシップより上位の6着に入っている。

2014年のジャスタウェイといえば押しも押されぬ当時の日本の中距離界のエース、ゴールドシップは長距離界のエースである。その両横綱に対して2頭より劣る実績の3歳牝馬が先着したのである。

だから、次の年以降は毎年3歳牝馬が挑戦するだろうと思ったが、そうはならず。2015、2016、2017年と参加頭数はゼロなのである。

これはどうしたことか、勝つ気あんのかよっていう話になる。

これは日本文化の美学みたいなものも関係しているのだろうか、日本の男のエースが勝たないとダメなのか。

3歳の小娘が勝っても自分らのプライドが許さないのかよ、って今年の勝ち馬がその小娘じゃないかよ。

去年も似たようなことを書いたが(「マカヒキは負けた、そして海外レースの馬券発売はJRAの踏ん張りどころ」)、やはり日本勢の挑戦はあまりにフェアすぎる。3歳牝馬が強いなら桜花賞とオークスの上位5頭ずつの計10頭で挑戦すればいいのである。

競馬と言う勝負の世界なんだから、勝つ可能性の一番高い馬で挑戦するのがスジだろう。

その年の3歳牝馬路線の最終戦である秋華賞の売り上げは激減するだろうが、だったら秋華賞の賞金額を5倍くらいにしてヨーロッパの3歳牝馬を招待すればいい、強いヨーロッパの3歳牝馬は全頭が日本に来ている、これで凱旋門賞は勝てる、うん、これいいアイディアだな。

というのはやりすぎかもしれないけど、それぐらいの気持ちは持って欲しいJRAには。だって、凱旋門賞のレースはJRAが主催せずに他人のフンドシで相撲取るだけなのに40億近い売り上げがころがりこんでくるのだ。

リスクを負うのはJRAじゃなくて、挑戦した馬主と馬と、あとファンなのだし。

「他人のフンドシで相撲を取ってる」なんて言われたくなかったら本気になれJRA。

最低でも4頭で挑戦してくれ

今年の2頭は相手にならなかったので、最低でも4頭はそろえて挑戦しよう。逃げてレースを作れる馬が1頭、これは武豊とかに乗らせればいいな。

で中段から先団で控える本命の2頭、鞍上はルメールとデムーロでいい、そして最後の直線が長いからもしかして追い込みが決まるかもみたいな追い込み一手の馬が1頭、これはやはり横山典弘あたりを乗らせるか。

その4頭と4人で毎年参加するのだ、これはハマれば5年くらいでタイトルが取れるかもしれない。

よし、これで騎手は決まった。

で、次にローテーションだ。

ローテーションはエルコンドルパサーを真似たいけど

今までの日本勢の中でひときわ異彩を放つのが、エルコンドルパサーのローテーションである。

春にヨーロッパに渡り、3戦した後に凱旋門賞に臨み、勝利にかなり近い2着を取った。実際、1着のモンジューはエルコンドルパサーより軽い斤量の3歳馬であり、タラレバを言ってしまったらどうしようもないが、日本馬が凱旋門賞に一番近づいた2着であったと言っていいだろう。

エルコンドルパサーを真似るとすると春シーズンに日本で稼ぐのをあきらめて、賞金の低いヨーロッパで滞在費をかけながらレースに出るというかなりのコストを強いられるハメになる。

エルコンドルパサーがなんでこんなローテーションを組めたのかと言うと、前年にジャパンカップを勝っていたのでもう日本のレースを勝っても意味がないと腹をくくっていたからだろう。

しかし、まあこういう根性のあるエルコンドルパサーみたいな馬が毎年現れるのを待っていることはできないので、まあ夏か秋にフランスで最低でも2戦くらいして、凱旋門賞に臨んでほしい。

あと、日本にフランスの馬場に似た競馬場があれば、そこでトライアルレースを開催すればいい。G1勝つとかじゃなくて、凱旋門賞に合った馬場のレースを勝った馬がいいと思うんだ。

思い切って上位5頭くらいまで優先出走権プラス滞在費プラス渡航費と登録料を全部出すよって。

札幌記念を2400メートルにしてトライアルにしたらどうだ

日本の競馬場で、一番ヨーロッパの馬場に近いのはどこかと言ったら函館競馬場と札幌競馬場である。

だったら夏の最強馬決定戦である札幌記念の距離を2000メートルから2400メートルに延ばして凱旋門賞トライアルにすればいいんだ。

これはいい。2400メートルが難しいなら2600メートルでいい。一緒に札幌日経オープンもトライアルにすればいい。

で、このレースには3歳牝馬はあまり出ないから3歳牝馬クラシックの桜花賞とオークスも凱旋門賞トライアルにすればいい。

これで日本の凱旋門賞のトライアル4レースが決まった、桜花賞、オークス、札幌日経オープン、札幌記念だ。あと、春の天皇賞と初夏の宝塚記念も加えて6レースにしよう。あと怒られるけど日本ダービーもね、これで7レース。

上位5頭だと35頭になってしまうので、上位3頭で計21頭まで減らそう。

で、この21頭とルメール、デムーロ、武豊、横山典弘、他多数で毎年参戦するのだ。多分勝てるぞ。

でも、凱旋門賞ってそこまでして欲しいタイトルなの?

この案を実践すれば多分5~10年で勝てるのではないか、でも国内の多数のレースが凱旋門賞仕様になってしまってファンは喜ぶだろうか、というか勝ったらその後どうすんだ、勝ってからも毎年そんなことできるのか。

毎年凱旋門賞の売り上げが40億円くらいあればいいかもしれないが2年目の今年がいきなり40億円割れしてしまっているのだ。

というより40億は売り上げだから、JRAの取り分は25%の10億円だ、さらにフランスギャロの取り分があるから半分渡しても5億円だ。

21頭と関係者の滞在費に渡航費に、21頭分の登録料、結構いい値段しそうである。

そもそも日本には秋にジャパンカップという日本と国外の馬のトップを決めるという名目のレースがあるのである、そっちはどうなるんだ。JRAの凱旋門賞シフトによって、ジャパンカップのレベルダウンを招いたら意味が無い。

実際ジャパンカップの国外からの出走馬のレベルは毎年低い、日本国内の馬が十分強いのでレース自体のレベルが低いかと言われるとそれは微妙なのだが、毎年よくわからない無名の外国馬がやってきて、かなりしらけるというのが多くの日本のファンの気持ちだろう。

ジャパンカップを12レースに増やす

だから、やはり凱旋門賞の売り上げは全部ジャパンカップに使って国内のレースを楽しくするというのでいいのではなかろうか。

凱旋門賞は勝たなくていいよ、売り上げさえ持ってきてくれれば、というか勝たない方が売り上げあがるだろうし。

他国の凱旋門賞を勝ちたいのか、それとも日本に世界トップのレースを作るのか。ファンからしたら日本に世界トップ、つまり世界一決定戦があるほうが圧倒的に興奮するよ。

仮に「凱旋門賞が欲しい」というモチベーションの一つが「世界一のレースだから」というものならば、日本に作ればいいのだ。

まず、当たり前だけど、現在ジャパンカップは芝とダート(チャンピオンズカップ)の2レースしかないけど5レースくらい作る。

芝1200メートル、芝1600メートル、芝2000メートル、芝2400メートル、芝3200メートル、ダート1200メートル、ダート1600メートル、ダート2000メートルの計5レースだ、あ、8レースになった。

まあでもしょうがない。8レースあったら楽しいもん。開催する競馬場をどうするんだという大きな問題はちょっと置いておく。東京競馬場で全部できるのか、今中京で開催しているダート(チャンピオンズカップ)はどうすんだという問題も置いておく。

だってファンの楽しさの前にはそんな競馬場の問題なんて些細なことだ、どうにかしてもらわないと困る。

で、一つのレースの総賞金を5億円くらいにするとすると、8レースだから40億円で、凱旋門賞のJRAの売り上げとトントンじゃないか。

凱旋門賞の40億円の売り上げは全部JRAのものになるわけではなく、まず75%を当たり馬券に払うから残り10億円、凱旋門賞の主催であるフランスギャロと折半するだろうから半分の5億円くらいしか入ってこないだろうが、ジャパンカップが8レースあったら、楽しいよ、こりゃ。

凱旋門賞だけでなくブリーダーズカップとか香港のレースとかも馬券発売してるから海外分の収益だけでなんとかなるのではなかろうか。

で、8レースじゃなんかあれなんで、牝馬限定レースとか馬齢限定レース(2歳とか3歳とか)も増やして計12レースにすれば一日の全レースがG1レースになる。

アメリカのブリーダーズカップよりも楽しいレースになるはずである。こりゃあ楽しい、この夢のジャパンカップ12レース化計画は発案者(私)の地元である東京競馬場で開催する予定なので私もうれしい(私は京王線沿線に住んでるから)。

で、凱旋門賞を勝つにはどうすりゃいいのか

凱旋門賞を勝つ話が、ジャパンカップを12レースに増やす話になってしまったが、凱旋門賞に挑戦する馬の顔ぶれを見て毎年思うことが、「中距離」路線の馬ばかりだなということ。

今年のサトノダイヤモンドは3000メートルの菊花賞を勝っているので厳密には中距離ではないが、サトノダイヤモンドが長距離重賞であるダイヤモンドSとかステイヤーズSに出走するのは考えにくいのでやはり中距離馬カテゴリーに入れていいと思う。

というか私はデルタブルースとかポップロックみたいないわゆる長距離じゃないと「ダメなのアタシ」って感じの馬が凱旋門賞を勝つんじゃないかなと思っている。だから、アルバートとか、ゴールドアクターとかの馬主さんたち、そこらへん、よーく考えてみよう。

あと、毎年、宝塚記念勝てなかったから凱旋門賞あきらめました、っていう関係者のコメントを聞くが、馬場が違うんだから関係ないでしょと思う。むしろ宝塚記念で負けたほうがいいのではないか、今年のキタサンブラックとかね。なんで挑戦しなかったかサブちゃんよ。

本当にあった?みたいなヨーロッパ漂流記 『獅子の城塞』

獅子の城塞

  • 書名: 『獅子の城塞』
  • 読み: ししのしろ
  • 著者: 佐々木譲
  • ISBN: 978-4101223278
  • 発行日: 2016年4月1日
  • 発行: 新潮文庫
  • 価格: 990円(税別)
  • ページ数: 763
  • 形態: 文庫

穴太の職人である戸波次郎左(『天下城』の主人公の息子)は織田信長から「日本にヨーロッパ風の城塞を立てるためにヨーロッパで学んでこい」と命令され、天正遣欧使節団とともにヨーロッパへ渡ることになる。

ヨーロッパも日本と同じく戦乱が続き、戸波次郎左の築城技術は重宝されるが、戸波次郎左がヨーロッパに渡った直後に信長は本能寺で倒れていた・・・

イタリア、オランダと渡り歩く主人公は日本に帰ることができるのだろうか。

小説の魅力のひとつはリアル感である。本当にあったことかどうかとかフィクションかどうかというのは関係なく、物語と文章が発するホントっぽさがリアル感を生むのであり、リアル感により読者は物語に没入できるのだと思う。

宇宙人が主人公の枕元にいきなり現れて宇宙船に乗って銀河の果てまで宇宙旅行をした、みたいな話でもリアル感、つまりホントっぽさがあれば読者は物語の世界に入っていけるのだ。

で、本書であるが私は本を読んだ後にすぐGoogleの検索窓に「戸波次郎左」と入力して検索してしまった。

結果は、「獅子の城塞」か「佐々木譲」関連のページばかり出てきた。Wikipediaのページが出てくるかと思ったが、戸波次郎左は作者の創作の人物であった。

だが、しかし、本書は本当にあったことのような感じで終始書かれているので、これ信じてしまう人いるよね、私がまさにそうだ。

私が初めて読んだ小説は咲村観の『上杉謙信』だった、確か小学5年生だった。ウブな私は上杉謙信や家臣たちのセリフまでがしっかり書かれているので、これは誰かが記録してそれを作者が小説に書き直したものだろう、と当時は信じた。

でも、上杉謙信とその家来達が何を言ったかみたいな詳細な記録が残っているはずがない。つまりほとんど作者の創作なんである。

それに私が気づいたのは、20歳を過ぎたくらいの時だろうか、歴史小説はほぼ想像、というか小説という時点でフィクションなのである。「実録歴史ノンフィクション」ではなく歴史「小説」なのである。

で、本書でおどろくのがそのテンションである、ずっと同じテンションで、中だるみがないんである。書いていて驚いたのだが本書は700ページもあったのか、読んでいても長い気がしなかった。

日本の戦国時代と同時期のヨーロッパも戦争が行われているので、築城技術を持った人間が重宝されると言う視点は面白いと思う、というか戦争は今も起きていて、たまたま今の日本の国内が平和なだけか。

朝鮮戦争の話だけど内灘の話が気になるのだ 『朝鮮戦争』

朝鮮戦争

  • 書名: 『朝鮮戦争(上) 血流の山河』、『朝鮮戦争(下) 慟哭の曠野』
  • 著者: 芝豪
  • ISBN: 978-4062779692(上)、978-4062779706(下)
  • 刊行日: 2014年12月12日
  • 発行: 文春文庫
  • 価格: 各1,060円(税別)
  • ページ数: 672(上)、640(下)
  • 形態: 文庫

非常にストレートな書名の通り、本書は朝鮮戦争を描いた小説である。1950年6月の開戦から、1953年7月の休戦までの戦いの流れが北側の指導者、南側の指導者、そして普通の市民の視点から描かれる。

主な登場人物達は、北朝鮮の指導者である金日成、中国の指導者・毛沢東、中国軍の将軍・彭徳懐、ソ連のスターリン、アメリカ大統領トルーマン、アメリカ軍の将軍マッカーサー、リッジウェイ、ヴァン・フリート、韓国軍の白善燁(ペク・ソニョップ)に丁一権(チョン・イルグォン)、日本の首相吉田茂などである。

そこに蕗原謙二と安徳河(アンドクハ)という架空の人物の話が挿入され物語は進んでいく。

朝鮮戦争は、まず北朝鮮軍がソウルを占領し、破竹の勢いで半島南の釜山まで迫るが、そこからアメリカを中心とした連合軍の反撃が始まり、連合軍はソウルを奪回、戦線を中国国境近くまで押し返すのだが、そこで中国軍が登場し、戦線は現在の38度線付近で膠着し、休戦となる。

日本の隣の国の出来事であるが、私は朝鮮戦争については38度線と板門店いう言葉くらいしか知らなかった。ベトナム戦争の前に米国とソ連・中国軍が代理戦争をした冷戦の始まり、みたいな認識だった。

この戦争、きっかけの多くを作ったのは日本である。

日本による1910年の韓国併合から太平洋戦争に日本が負けるまでの35年の間、朝鮮半島は日本によって占領されていた。しかし太平洋戦争に日本が負けたため日本軍が朝鮮半島から撤退し、半島はアメリカとソ連を中心とする連合国による統治を受けることになる。

半島の北側はソ連、南側はアメリカである。これが朝鮮民主主義人民共和国と大韓民国のベースになっていく。そしてどちらも南北統一を目指していたため、この朝鮮戦争が起きるのである。

登場人物たちが小説のように喋るのと、架空の人物たちも出てくるので一応は小説であるものの、架空の人物が出てくる部分以外はノンフィクション的な雰囲気が強い。

戦記モノなので、いわゆる軍隊における常識みたいな単語がいっぱい出てくるのだが、一番困ったのが師団、連隊、大隊、みたいな部隊の単位の名前である。

日本の歴史小説などを読んでいると戦闘に参加した兵隊たちの人数が足軽5,000人とか、鉄砲隊300人とか、騎馬隊500人とか具体的な数で説明されるのでわかりやすいのだが、本書は近代戦を描いているためか、出てくる兵数の単位が単純な人数ではなく師団とか連隊とかの単位になっているのだ。

で、これがよくわからない。上巻の最初の方に師団だと何人くらいの兵隊がいますよ、連隊だと何人くらいですよ、っていう説明が出ていたのだが、あとから探しても見つからなかった。

だから、wikipediaで調べたよ、アタシは。師団は大体1万から2万、で連隊は5,000人くらい?、大隊はだいたい・・・まあ細かいところは自分で調べて、ある程度頭に入れとくといいでしょう。

正しいかどうかはわからないけど、ともかく次のWikipedia(軍隊の編制)が参考になります。

本書を読む場合はその軍隊の構成人数を把握してないと、なんだかわけのわからないことになるので注意です。

朝鮮半島の地名は少し知っていても位置関係がよくわからず、なんで地図が出てこないんだろうな〜と思ってたら、上巻の巻末に地図がたくさん出ていたのに気づいた、上巻を読み終わった後に。もちろん下巻も同様に巻末に地図がたくさんくっついているので読む前にじっくり眺めておくと非常にわかりやすい。

本書の舞台は朝鮮半島だが、たまに北京の毛沢東、モスクワのスターリンの話が挿入され、連合軍の前線基地ともいうべき日本国内の動きも挿入される。

米軍に依頼されて武器を作る話であるとか、日本から掃海艇が出されたという話も、で、その総括とも言うべきなのが石川県の内灘の話である。

下巻の最後の方に出てくる石川県の内灘の闘争は、なんというか、救いがないお話。で、この内灘ってどこかで聞いた名前だなと思っていたら、私は以前に行ったことがあったのを思い出した、鉄板道路ってなんだろうかと思ったがそういうことだったのか。

内灘についてはこのブログで以前に書いた( 「 とにかく電車に乗りたかったのだ 『ヨーロッパ鉄道旅ってクセになる! 国境を陸路で越えて10カ国』 」)、あの時は、鉄板道路と聞いて太平洋戦争か明治維新の史跡かと思ったが、それよりも新しい朝鮮戦争時代の史跡だったのである。

この部分には本書の一応の主人公である蕗原謙二も絡んでくるので、筆者はこの話を一番書きたかったのかもしれない。

だって、この小説で挿話だけなんか異質なんである、なんだか。

岩井三四二の小説は短く感じる『崖っぷち侍』

崖っぷち侍

  • 書名: 『崖っぷち侍』
  • 著者: 岩井三四二
  • ISBN: 978-4167903190
  • 刊行日: 2015年3月10日
  • 発行: 文春文庫
  • 価格: 720円(税別)
  • ページ数: 354
  • 形態: 文庫

安房(千葉県)を本拠とする里見氏は相模を拠点とする北条氏との戦争に明け暮れていたが、豊臣秀吉の小田原攻めにより運命が変わっていく。

小田原攻めでは秀吉が勝利したのだが、秀吉の怒りを買い里見氏は減封される、関ヶ原の戦いの後には加増されるものの、その後改易されてしまう。

本書はその里見氏の家臣である金丸強衛門を主人公とした戦国時代小説である。

金丸強衛門は主家が頼りにならないので、前から行なっていた廻船商売に本腰を入れ始め、たくましく生きていく。

岩井三四二の小説は人物造詣が非常にうまくできていてストーリーもしっかりしているのでこれ以上の説明は野暮かもしれないが、いい意味でも悪い意味でもストーリーとか語り口に特徴が無い、つまり変なクセがない。

私は岩井三四二の作品はこれまで『霧の城』、『おくうたま』、『理屈が通らねえ』の3作品しか読んだことは無いが、強烈な印象を残さない代わりに妙な後引き感みたいなのがある。

なんだろう、もっと読んでいたいな、というような感覚である。何でかと考えてみると、それは主人公の選び方がうまい作家なのではないかなと思う。

『霧の城』の主人公は武田家の家臣としては有名だが小説の主人公にはしにくい秋山信友、『おくうたま』は信長に滅ぼされた浅井長政の庶子が主人公、『理屈が通らねえ』は算法者の二文字厚助が主人公である。

最近の時代小説というか、戦国時代の小説は織田信長、豊臣秀吉、徳川家康などの戦国の大有名人を主人公にした物語よりも、信長の家臣であるとか、秀吉の家臣、はたまた家康の家臣を主人公にしたものが結構多い。つまり大名ではなく、その配下である中間管理職の武将を主人公にしたものが流行っているのだ。

バブル期に中小企業の社長が金持ってウハウハしていた頃とは打って変わり、最近は独立はハイリスクとみなされ、寄らば大樹の陰と大企業に入っていることがステータスになっているような気がするが、その大企業でさえクビになるかもしれないし円形脱毛症になるかもしれないし結構大変なんだ、それに海外企業に買収されるかもしれないし・・・

みたいな世相を反映しているのか、中間管理職モノが大流行である。中でもやはり信長を主に持った武将やら職人やらの悲哀を描いたものが多い。

で、まあそんな大企業に勤めるというか、上から圧迫される側(『おくうたま』形は違えど信長からの圧迫の末、家が無くなった)をたくさん書いているのが岩井三四二なのだと思う、本書を入れて4冊しか読んでないけど。

本書はその最たるもので、自分の主は信長ほどの実力は無い、だからそれに伴って自分たちの実力(兵力)もない、だから時代の波に翻弄されるわけなのだが、主人公は後世に名を残すような有名な武将でない分、非常に粘り強い。

つまり世間知らずのボンボンでない分、しぶとい。

もっと読んでいたかった。本書もこの3倍くらいのボリュームで出しても問題ない。

というか戦国時代を舞台にした小説は押しなべてみんな短い。戦国時代の小説は大体において主人公の一代記になるので、1人の人生分くらいの長さの物語を1冊の小説で語らなくてはならなくなる。

だから、重要と思われるような合戦とか事件の描写が思ったよりも短くなり、読者はあれ?こんな軽い扱い?なんか短い気がするな、となるのである。

唯一ちょうどいい長さかなと思ったのが山本一力の『朝の霧』くらいで、これは一代記ではなく主人公の破滅という部分にターゲットを絞ったためそうなったと思われる。

それ以外の戦国時代の小説はとにかく短い、戦国時代の小説の印税はページ枚数が増えれば増えるほど割合が増えていく、みたいな形式にして作者に枚数を競わせるような出版社が出てきてもいい。

余韻がずっと醒めない映画みたいな傑作 『平原の町』

平原の町

  • 書名: 『平原の町』
  • 原題: “CITIES OF THE PLAIN”
  • 著者: コーマック・マッカーシー(Cormac McCarthy)
  • 訳者: 黒原敏行
  • ISBN: 978-4151200588
  • 刊行日: 2010年1月20日
  • 発行: ハヤカワepi文庫
  • 価格: 1,060円(税別)
  • ページ数: 495
  • 形態: 文庫

私がコーマック・マッカーシーの作品を初めて読んだのは『ザ・ロード』である。

終末SFの作品として紹介されていたので、読んでみたのだがあまりに暗くて気持ちがどよーんと落ち込んだのを覚えている。

ストーリーは父と息子が最終戦争後のアメリカと思しき場所を安住の地を求めて彷徨するというもので、SF的な説明などはほとんど無く、疲れきった親子の会話を中心に話が進んでいくという、とにかく絶望的な話だった。

最後にはほんの少しだけの希望が示されるのだが、それが希望なのか、ホントに希望と受け取っていいのか悩むような希望である。

SFを読みたいと思って読んだのに、なんというか強烈なカウンターパンチを浴びてしまい、読後の印象は悪かった。

しかし、少し経ってから越境三部作が売られているのを見て、3冊全部買ってしまった。(正確には『すべての美しい馬』と『越境』を買って数日してから『平原の町』を買った)

もっと正確に言うと『すべての美しい馬』と『越境』を買ったのが2010年の11月27日、『平原の町』を買ったのが同年の11月30日である。

ついでに言うと11月30日は私が初めてのスマホであるシャープのIS03を買った日だ、すごい期待していたスマホだったが、初期のAndroidはとにかくなんつーかがっかりな出来だった。

って関係ないか。

正確に日付けがわかるのは私が日記をつけているからなのだが、それもまた関係ない。

『平原の町』はコーマック・マッカーシーの越境三部作の第三作目であり、本作では『すべての美しい馬』の主人公であるジョン・グレイディと『越境』のビリー・パーハムがメキシコとの国境近くの同じ牧場で働いている。で、本作の主人公はどちらかというとジョン・グレイディである。

『すべての美しい馬』と『越境』とたしか『ザ・ロード』もそうだったが、本作も登場人物たちが喋るセリフに鉤括弧(「」)がない。最初はそれに戸惑うが、だんだん慣れてくると映画のワンシーンをスローモーションで見ているような陶酔感を味わえる。

『すべての美しい馬』と『越境』はページに文章が詰まっていて少し読みにくかった記憶があるが、本作は改行が結構あるので読みやすい。

しかし文章を1回なぞっただけではすぐに頭に入ってこない、これはグレイディが喋ったのか、それともビリーが喋ったのか?よくわからないので何度も何度も読み返すのだ、それが映画をスローモーションで見てるような感覚を呼び起こすのだろう。

溶けなくて絶対に飽きないアメをなめているみたいだ、舌がしびれることも無い。私は読み終わったけどまだ、私の口に入っているアメは全く溶けてない感じだ。

ストーリーは解説を読めばいい、解説は非常によくまとまっている。ストーリーを追うタイプのエンタメ作品ではないのでストーリーが気になるのであれば解説を読んでから買えばいい。

取り留めの無い説明になったけどすごいいい映画を1人で映画館で見て、帰りの電車の中でも映画の余韻から醒めない、みたいな状態がずっと続くような読書体験ができる。つまり傑作だ。

文禄・慶長の役は暗いんだよな 『黒南風の海』

黒南風の海

  • 書名:『黒南風の海』(くろはえのうみ)
  • 著者:伊東潤
  • ISBN:978-4569760957
  • 刊行日:2013年11月26日
  • 発行:PHP文芸文庫
  • 価格:762円(税別)
  • ページ数:413
  • 形態:文庫

文禄・慶長の役(1592~1598年)で、加藤清正陣営から朝鮮側についた佐屋嘉兵衛と、朝鮮側から加藤清正側についた金宦(良甫鑑)、この日本と朝鮮の2人の主人公の葛藤を描いた歴史小説が本書である。

明を征伐するために、朝鮮半島へ侵略する日本軍の中で、佐屋嘉兵衛は徐々に戦いの大儀に疑問を持ち始める、そんな中朝鮮軍に捕らえられた彼は日本軍への使者の役目をさせられることとなる・・・

結末は文禄・慶長の役と同様苦い。佐屋嘉兵衛と金宦の文禄・慶長の役での活躍を描いた物語なので戦争の後の彼ら2人のその後が詳しく語られないのが残念、その後が気になる。

戦国時代とその前後の時代の歴史小説はかなりの数が出ているはずだが、文禄・慶長の役を主題にしたモノはあまり出ていないはずである。

何故なら、話が暗くなるからである。信長・秀吉に仕え、関ヶ原では勝ち組になった武将を主人公にした歴史小説などを読んでいても、文禄・慶長の役はサラリと流されてしまうことも多い。

あれ、これだけ?と。

加藤清正にしても、小西行長にしても、文禄・慶長の役で彼らがなにを行なったかを書いてしまうとカッコいい武将の物語のはずなのに、あれ、薄汚い政治家に過ぎなかったの?みたいな印象を読者に与えてしまい困るのであろう。

戦国時代のヒーローであるカブキ者・前田慶次郎を描いた『一夢庵風流記』でさえ、文禄・慶長の役の描写に限り非常に暗い気がするし妙に短い、でそのスピンアウトとなったマンガ作品である『花の慶次』ではなんと、慶次郎は朝鮮ではなく琉球に向かっている。

『花の慶次』は『週刊少年ジャンプ』で連載されていたので、文禄・慶長の役は少年たちにはあまりにヘビーだと判断されたのだろう。実際、琉球編から別のマンガ、いい意味でも悪い意味でもジャンプのマンガらしくなった。って『花の慶次』の話ではなかった。

文禄・慶長の役は他国(尾張とか美濃とかの国じゃなくて海外の国)に対する侵略戦争である、戦争が終わって朝鮮半島に泰平が訪れていたら侵略に大儀が生まれて解放戦争という扱いになっただろうが、そうはならなかった。

平たく言えば、日本の軍隊が外国に行って、そこの住民から食料を取り上げ、さらに住民を殺して、その後に何も残さなかったのである、大儀も何も無い。日清戦争から太平洋戦争に至るまでの日本の侵略戦争となんら変わらない。

信長が殺された本能寺の変を頂点として、戦国時代もののネタというのは面白みがなくなっていくと私は考えているが、たぶんそれは秀吉が暗くなるからだろう、なんでこんなに暗くなるか、専制君主は暗いのか、そうか、そういうことか。

「本屋が選ぶ時代小説大賞」を受賞したという帯がまかれているので、エンターテインメント大作と勘違いしてしまうかもしれないが、エンターテインメントならほぼ同じような題材の『徳川家康 トクチョンカガン』(荒山徹)をオススメする。

って、本書が面白くなかったかと言われれば、そういうわけではない、ただ歴史小説や時代小説に爽快感を求めているとするなら、ちょっとオススメできない。読後に気持ちがどんよりするので、心して読むように。

新・さ迷える転職大変記 第11話 「心療内科、ついに終了」

ok

また、かなり間が開いてしまったが、今回もいきなり始まる。

フレンドリーな会社に面接に行きちょっと落ち着く

前回、何をやっているかわからない会社に行き、当然のように破談となったが、それから1ヶ月後くらいにまた面接に行ってきた。

JR秋葉原駅近くの普通のマンションにあるソフト開発会社であるが、色々な会社のプロジェクトに社員を出向させている、まあ実態はIT系の派遣会社である。

迎えてくれたのは社長と人事のおじさんで、詳しくは聞かなかったが2人で会社を立ち上げたようである。

現状は派遣会社になってしまっているが、将来的には出向している社員を本社に戻し、会社もこのマンションから広いところに引っ越して受託開発を自社でしたいという野望を持っているようであった。

この会社のおじさん2人はかなり腰が低くフレンドリーだったので、現状(給料下がったこととか、ちょっと精神的に参っているとか、心療内科に行っていることは伏せたがちょっとほのめかしはした)を正直に話した。

で、彼らから出てきた答えは「デザイナからプログラマに職種が変わるし、さらにまずは出向という形になるからかなり環境が変わる、給料も少し減るだろうから家族いるけど大丈夫か?というかまずちょっと冷静になれ」というかなりまっとうなものだった。

実際に私を採用するかどうかということではなく、まず、私の現状を心配された感じである。

まあそうだよな、と思った。

社長は私の誕生日が彼の娘の夫、つまり義理の息子と同じだったのもあり、かなり親身になって色々話して聞いてくれた。

今私が行っている心療内科の先生より親切な感じだった。

彼が話している中で「プログラミングのセンスは、まとめて、伝える力」という発言が出てきたのだが、プログラミングだけでなく仕事をする際に一番大事なことであるなと思った。

逆に、それが無いとどこ行ってもダメだということである。

少しだけ今所属している会社で頑張ってもいいかなと思った。

2人からは、「すぐに結論は出さずに、色々考えてやっぱりプログラミングしたいならもう一度直接でいいから連絡くれ」と言われた。

ありがたいことである。

転職活動というのは、ドラクエで知らない土地にひのきのぼうだけ装備した状態で行って、次々と襲ってくるバラモスみたいなのから色んな攻撃魔法を浴びてもジッと我慢をするというイメージだったが、人の心を持った優しい人たちもいるのだな、ということがわかった。

こういうまともな感じの人たちがやっている会社もあるのだな、本当に困ったらここに連絡しようと思った。私は今がどん底のように感じてしまっているがそんなことは無いんだよなと思った。

心療内科終了

で、そんな中心療内科に行ってきた。

薬をほとんど飲んでいないことなどを話すと、じゃあ終わりにしましょうと言われた。

実際俺の何がわかっているのかよくわからない先生ではあったが、心療内科の先生が「終わりにしましょう」と言ってくれたことは、「まあなんとかこの人大丈夫そう」、と思われたということなので、そのことに少しほっとした。

いつも心療内科の隣にある薬局で薬をもらっていたが、今日はそれも無しで、お金だけ払って外に出た。

少し空がキレイに見えた。なんつって。

連載 「新・さ迷える転職大変記」バックナンバー

フラショナールのスーツが着てみたい 『カエアンの聖衣』

カエアンの聖衣

  • 書名: 『カエアンの聖衣』
  • 原題: “THE GARMENTS OF CAEAN”
  • 著者: バリントン・J・ベイリー(Barrington J. Bayley)
  • 訳者: 冬川亘
  • ISBN: 978-4150105129
  • 刊行日: 1983年4月30日
  • 発行: ハヤカワ文庫
  • 価格: 660円(税別)
  • ページ数: 342
  • 形態: 文庫

高価なカエアン製の衣装を大量に積んだ宇宙船がとある惑星に不時着する、そのお宝を秘密裏に回収したリアルト・マストとペデル・フォーバースが本作の主人公。

ペデルはお宝の中に、カエアンの伝説の服飾家(サートリアル)であるフラショナールが幻の生地プロッシムで作ったスーツがあるのを見つける。惑星カエアンでは人間の中身よりもその人が着る衣装が重要とされ、その衣装にも不思議な力が宿っており、人々は様々な衣装を着けかえることで見た目だけでなく人間の性格や能力も変わってしまうのだという。

フラショナールのプロッシムのスーツはそのカエアン文明の生み出した最高傑作の衣装であり、ペデルはそのスーツを着ることで超人的な能力を発揮し、権力の座に登りつめようとするが、実はプロッシムという生地は知能を持っていて、人間に寄生し支配しようと企んでいたのである...

着る服で能力が変わるとまでは行かないかもしれないが、気分が変わって一種の高揚感を得ることはある。一番わかりやすいのがスーツだろうか、わたしはあまりスーツを着る機会がないのであるが、たまに着て歩いていてビルのガラスに自分の姿が映ったりすると、あ、スーツもたまにはいいかもと思う。

気取った店だとフォーマルな格好じゃなきゃだめよ、といわれたりもするし、実際仕事の面接などにビーチサンダルと短パンなどで行くと、人格が高潔で能力抜群であっても、社会性を疑われることになりおそらくというか絶対面接に受からないだろう。

もっとわかりやすい例で言えば、夏に真っ裸で道路を歩いていたら警察に捕まる、つまり現代の社会もカエアンと似たような感じにはなっているのだ。って当たり前か。

でも、このフラショナールのスーツ、着てみたいな、一度だけ。