逃げ出したい気持ち 『監獄ラッパー』

監獄ラッパー B.I.G.JOE

  • 書名:『監獄ラッパー』
  • 著者:B.I.G. JOE
  • ISBN:978-4101260815
  • 刊行日:2014/8/1
  • 価格:520円(税別)
  • 発行:新潮文庫
  • ページ数:270
  • 形態:文庫

オーストラリアに薬物を密輸したことで逮捕された日本人ラッパーの獄中記が本書。

異国の地の刑務所での日々がつづられている。

獄中記を読むと、刑務所の中と比べてシャバにいる今の自分の境遇がいかに恵まれているかということに気づき、ガンバらなきゃいかん!と思うのだが、今回はそうはいかなかった。

潰れそうな会社で、めげてしまいそうな気持ちをエンヤコラと必死で正常に保とうとしつつ転職活動をしている私から見ると、刑務所でのシンプル?に見える生活がうらやましかった。

刑務所の中が私の今いる環境よりいいわけはないのだが、なんというか、うーん。

会社を建て直すというような気概もなく、ダラダラとやる気のない状態で今の会社に勤め続けているという状況が私の精神に打撃を与え続けている。

早く転職したい、でも今より給料がいいところを見つけられない。

このまま転職できずに会社が潰れて・・・

会社から逃げ出したいという気持ちを押し殺しつつ無理している私が、刑期を終わらせて日本に帰ろうという強い意志を持っている筆者を見るととにかくまぶしいんだ。

米粒の悩み 『ご先祖様はどちらさま』

ご先祖様はどちら様 高橋秀実

  • 書名:『ご先祖様はどちらさま』
  • 著者:高橋秀実
  • ISBN:978-4101335568
  • 刊行日:2014/9/1
  • 価格:520円(税別)
  • 発行:新潮文庫
  • ページ数:274
  • 形態:文庫

現在も私の転職活動は絶賛進行中である。

10日ほど前に同僚がリストラされ辞めていった。

彼の業務がすべて私の業務となった。

その同僚がいる時は仕事をサボって面接に行ったりもできたのだが、細切れの、でもやらなくてはならない電話対応やら発送業務やらサポート業務が回ってきて大変である。

モチベーションもあがるはずもなく、どんよりとした気分で日々過ごしている。

会社は今年いっぱいは給料が出るようだが、来年はよくわからない。

わが社のお金の流れの話を聞くたびに、これではダメだろうという思いが強くなっている。

昼休みになると弁当を自分の席で素早く食べて、会社のイヤな雰囲気から一刻も早く抜け出し、近所の神社の境内に座り、スマホで転職サイトの情報を指でクイックイッとしている。

まだ会社にその同僚がいる時にプログラマの面接に行った。

しかし、給料面で折り合わず破談となった。

ネックはとにかく給料面である。

結婚していて子供がいて、現状で妻が専業主婦となると、給料の額は今より落とせない。

現状で私の自由になる1か月のお小遣いはちょうど1万円なのだが、1万円月給が下がると、私のお小遣いはゼロとなる。

家族貯金などを削ればいいと思うのだが、なんつーか、それは言えない。

意地なのかなんなのか。

高橋秀実は毎回面白いテーマで文章を書いているが、本書は自分の先祖に興味を持ち、そのルーツをなんとかたどってみたら高貴な血筋にたどりついた、というお話である。

自分の両親は2人、祖父母は4人、その前の世代は8人、16人と4世代辿っただけでご先祖は倍々に増えていき、30世代遡ると1,073,741,824人(10億人!)となる。

さらに、これは30世代目だけの数だから、1から29世代目を含めるともっと多い。

だから自分のご先祖になんらかの高貴な血が入っているのは当たり前なのである。

それだけのご先祖様がいることを考えると転職して給料が下がるかもみたいな話は米粒みたいなもんなのであり、転職などどうでもいいし、1万円給料が下がっても別に誰も悲しまないし、そんなの気にするなみたいな気持ちになるが、やはり私自身は十億とか何百億という数のうちの一つの米粒であり、米粒は米粒なりの悩みがあるから、さあ大変だ。

働く喜びってなんだろう。 『新装増補版 自動車絶望工場』

新装増補版 自動車絶望工場

  • 書名:『新装増補版 自動車絶望工場』
  • 著者:鎌田慧
  • ISBN:978-4062770392
  • 刊行日:2011/9/15
  • 価格:629円(税別)
  • 発行:講談社文庫
  • ページ数:384
  • 形態:文庫

数年前に購入し、何回か読もうと思って手に取ったが「絶望」という文字が目に飛び込んできてイヤな気分になったの読まずここまで来た。

会社の業績不振により、減給をされ、さらに会社自体も数ヶ月先がどうなるか見えない。

2年前に上司との関係から精神的に参ってしまい、それ以降ずっと転職活動を続けているが、

まだ踏ん切りがつかない。

そんな時の会社の業績不振であり、給料カット。

私が辞めるのが先か、会社がつぶれるのが先か?

というチキンレースをしている。

その間にも気の早く賢い同僚達数人は会社を去っていった。

メンバーが減ると業務にしわ寄せが来る。

もうどうしようか・・・

という現在の私の状況へのヒントがあるかもしれないと思い、読もうと思って手に取ってはやめていた本書を読んでみる気になったのである。

ルポライターである筆者が季節工(期間限定の工員)としてトヨタの自動車工場で働いた記録が本書。

トヨタの自動車工場での奴隷のような労働が細かく書かれているが、自分の今の状況と比較するとそこまで変わらないのではないかと思ってしまう。

絶望は「希望」というものがまったく無い状態のことだが、私も仕事をしているとそのような気持ちになってくる。

上司に逆らえない状況でつぶれそうな会社で減給されながら働く、というのは絶望とまでは行かないが、絶望にちょっと近づいているように感じる。

働く喜びってなんだろう。と帯に書いてある。

確かに。

なんだろうか。

働く喜びって。

会社に入った当時は楽しかった、尊敬する上司に一応希望通りの仕事。

私が今ほしいと思っているのは働く喜び、ではなく、まずは安心感と、安定した気持ちだ。

来年の今頃、私は何をしているのだろうか。

強くてキラキラした戦国ニューヒーローの誕生 『剣豪将軍義輝』

義輝

  • 書名:『剣豪将軍義輝』「上巻 鳳雛ノ太刀」「中巻 孤雲ノ太刀」「下巻 流星ノ太刀」
  • 著者:宮本昌孝
  • ISBN:上巻978-4198934613、中巻978-4198934620、下巻978-4198934637
  • 刊行日:2011/11/2
  • 価格:上巻701円(税込)、中巻741円(税込)上巻771円(税込)
  • 発行:徳間文庫
  • ページ数:上巻362、中巻406、下巻541
  • 形態:文庫

数年前に戦国小説『ふたり道三』を読んで、宮本昌孝のファンになった。それから同じ作者の『風魔』を読んだが、羽柴秀吉が織田信長の後を継いでからの時代のお話なので血湧き肉踊らなかった。

戦国時代で一番輝いていた一番の有名人と言えば誰が何と言おうと織田信長であり、それ以外の方々は刺身のツマみたいなものである。

特に面白みの無いのが羽柴秀吉と徳川家康で、ふたりとも悲劇的な死に方をしていないせいか結末を知るものとしてはドラマに緊迫感を感じにくい。

さらに2人とも信長の偉業を運よく受け継いだだけであり、親の七光り感は否めない。(七光りと言えば信長もそうだし、秀吉にも家康にもいろんな事情があるのは承知の上ですが)

その信長のお話の第一のクライマックスは桶狭間の合戦である、弱小大名である信長が東海道の覇者今川義元を寡勢で討ち取る。

この桶狭間で勢いを得た信長は越前の朝倉家を討とうとするのだが、またピンチに陥る。妹婿の近江の浅井長政が裏切るのである、これが金ヶ崎の退陣に繋がり、なんとか命拾いした信長は姉川で朝倉・浅井の連合軍を破る。

と、数多くのピンチと勝利を経て信長はあの本能寺の変に突き進んでいくのである。

ピンチ→勝利→そして悲劇とお話のタネがたくさん、血湧き肉踊るモロモロがたくさんなのが信長のお話である。

この戦国の代表者でありヒーローが生きている時代が戦国時代の中で一番面白いと、私は思うのだ。

だから戦国小説を読むときは信長以前なのか、信長と同時代なのか、それとも信長以降なのかで小説に対する期待度が違ってくる。

だから、たまに信長がほとんど出てこないのに面白い小説があったりすると驚くのである。その代表作が宮本昌孝の『ふたり道三』であった。(少しだけ出てくるんだけども)

信長を(ほとんどというか主役に)使わずにこれだけヒリヒリとハラハラとドキドキとする戦国小説は今まであっただろうか?と私は大興奮した。

斉藤道三という有名だけども、戦国群雄たちの中ではずるがしこいオジサンというイメージのアンチヒーローの物語だったがとにかくスゲー面白かった。

斉藤道三が実は2人いたという設定から親子の争闘の物語と、秘剣櫂扇をめぐるめくるめくチャンバラ忍術ごっこが展開されていく。

そこで、本作である。本作の始まるのは桶狭間よりも前、つまり信長以前(信長はすでに生まれているけど、桶狭間以前が信長以前か)である。期待は高まる。足利義輝は信長とどう絡むのか、それが本作に対する私の期待である。

そして、本作も親子の争闘の物語と、秘剣と最強の剣豪をめぐるめくるめくチャンバラ忍術ごっこが展開されるのである。

意外な親子と、チャンバラ忍術を重ねるという宮本昌孝の王道パターン?がここでも展開される。

義輝は信長とどう絡むのか?それは読んでからのお楽しみである。

惜しむらくはちょっと短すぎること(充分に長いんだけど)。そもそも実録小説でもなく、ふたり道三のようなキリキリ感も必要ないのだから、琉球、九州、北海道まで廻国修行していろんな事件を解決!みたいな形式にして全10巻くらいで刊行しても面白かったのではないかと思ったのだが、義輝は松永久秀に殺される運命にあるので、読者には終わりがわかっている、なのでその分切ないのだ。

で、そのことが物語にヒリヒリ感を生みだしている。私は本作を読んでいる途中で、何度も結末がハッピーエンド、つまり足利義輝が松永久秀に殺されずに生き延びて、浮橋や朽木鯉九郎、梅花に石見坊玄尊と小四郎、明智十兵衛(光秀)と共に日本全国で悪者をバッサバッサとなぎ倒して欲しいなと思ったものだが、読者に主人公を生き延びさせてあげたいと思わせる一つの原因は、主人公に悲劇的な最期が待っていることの裏返しでもある。

つまり、悲劇の主人公であるがゆえに、義輝は愛され、物語も愛されることになるのだ。だから、やっぱり義輝は生き延びないのである、ネタバレになるけど。でも義輝がどこかで生き延びていて欲しいと願う読者の気持ちは、義輝の息子が活躍する続編『海王』で少しだけ実現している。

で、二条御所での松永久秀の軍勢との最期の戦いを読んでいて、作者はこのパートを一番書きたかったのではないかと思ったのである。何故なら、戦国のニューヒーローは既存のヒーローである信長を超えなくてはいけない、その信長の最期の場所がどこだったかと言うと京都の本能寺なのである。

つまり、ニューヒーロー義輝は本能寺の近くの二条御所で信長と似たような最期を遂げるのである。時代的には前後しているのだが、逆に言えば信長の前には義輝がいたのだという意味にも取れる。

で、作者はさらに義輝に対する権威付けとして、まあ義輝は既に将軍なので権威付けというのは矛盾した言い回しになるのだが、つまり戦国ニューヒーローとしてのハクを付けるという意味で、戦国の三傑(もちろん信長、秀吉、家康)が義輝の才能に惚れるという描写を物語中に挿入している、さらに戦国のアンチヒーローである松永久秀と明智光秀も義輝を大器として一目置いているという描写を入れるのを忘れない。

もちろん明智光秀は義輝の味方なので、アンチヒーローではないのだが、彼が信長を好いていなかったという描写を入れることで本能寺の変の謎に対する伏線も入れている。もちろん本書では本能寺の変は描かれないので、その伏線は回収されないのだが、まあとにかく続編を意識したような持って行き方は、うーんうまいぞ!

うーむ、なんつーか、翻訳のせいにはしたくないけど 『ZOO CITY』

zoo city

  • 書名:『ZOO CITY』(ズーシティ)
  • 著者:ローレン・ビュークス
  • 翻訳:和邇桃子
  • ISBN:978-4150119065
  • 刊行日:2013/6/20
  • 価格:860円(税抜)
  • 発行:ハヤカワSF文庫
  • ページ数:447
  • 形態:文庫

殺人を犯すと一頭の動物と一緒に暮らすことになる、という面白い設定の本書。

その動物憑きの女性が南アフリカのヨハネスブルグで、ある双子ポップミュージシャンの片割れを追うという探偵ハードボイルドモノである。

期待して読んだが、翻訳のせいなのか、実際の文体のせいなのか、とにかくわかりにくい。

何が起きているのか、誰がしゃべっているのか・・・

実際に訳が悪いのか、そもそもの原書が悪いのかはわからないので断言をするのはイヤだけども、うーん、この作者と訳者の作品は今後買わないと思った読書だった。

さ迷える33歳-転職大変記

はじめてのAndroidアプリ開発―Android4対応版 (TECHNICAL MASTER)

  • 書名:『はじめてのAndroidアプリ開発―Android4対応版 (TECHNICAL MASTER)』
  • 著者:山田祥寛
  • ISBN:978-4798035857
  • 刊行日:2012/12/1
  • 価格:3,000円(税別)
  • 発行:秀和システム
  • ページ数:563
  • 形態:大型本

現在勤めている会社の業績はまだよくならない。

春の時点ではこのまま行ったら夏はやばいという話だったが、まだ潰れていない。

すぐ潰れるかどうかはよくわからなくなってきたが、転職活動を続けている。

先日面接を受けに行ったところで、「アプリ3つくらい作って持ってきてくれればいいだんけど」と、そこの会社の社長に言われた。

私は経験のほとんど無いプログラマに転身しようと考えているのだが、私を採用する方からすると私の実力は未知数、というかゼロに見えるだろう。

こんなプロジェクトに関わりました、こんなアプリケーション作りましたというのがあればいいのだが私にはそれがほとんど無いのだ。

だからどんなアプリケーションを作れるのかを知りたいのは当たり前である。

で、その発言である。

その会社は不採用となったのだが、理由を聞いてみたところ実力未知数の私に払える給料と私が要求する給料に大きな開きがあったからとのことであった。

そりゃあそうだ。

なのでこれからの面接に備えて、私の実力をわかってもらうアプリを作ることにした。

この本を買って、休日プログラマーとなり、鋭意アプリ作成中である。

そんな鋭意作成中の身で、また面接に行ってきた、そこは転職サイトで私に2度ほどラブコールを送ってきたところでさらに前職の給与を保証!と書いてあった、まあそんなに言うなら行ってやろうかという上から目線な気持ちで面接に臨んだ。

そこの会社は手書きの履歴書を持って来いというので、親しい仲からもそうでもない人たちからも悪筆で有名な私が3枚ほど履歴書用紙をムダにして3時間ほどかかっていつもならワードで数秒で出力してしまう履歴書を書き上げた。

書き上げた履歴書の文字は蛇がのたくったというか、あいうえおを覚え立ての小学1年生でもこうはなるまいという出来栄え。

これでは落ちるかなと思ったがそこは私に2度もラブコールを送ってきた会社なので大丈夫だろうと思って恵比寿にあるその会社にスーツを着て汗だくになりながら行ってきた。

まず面接の前に適正試験があった、だがプログラミング初心者レベルの私にはわからない。

でもそこは私に2度もラブコールを送ってきた会社なので大丈夫と思い、適当な答えを書いて提出して面接へ。

社長とその部下が出てきて色々説明してくれる。

私に2度もラブコールを送ってきただけあって、私にどんなポジションについて欲しいだとかいちいち詳しい。

何でうちの会社に面接に来たの?2度もラブコール送ったからもあると思うけど、と聞かれたので正直に今と同じレベルの給料がもらえそうと答えた。

あまりこういう答え方はよくないという気がしたが、それは2度ラブコールの会社である。

大丈夫だと思った。

そして最後に社長がオヤ?と思う一言を言った。

プログラマーとしての実力が心配・・・と。

やっぱり。

結局この会社は落ちた。

実際、合格しても行くかどうかは迷っていたと思うが、特に好みじゃないけどあっちがこっちのこと好きそうだったから軽い気持ちで一回飲みに言ったら、翌日メールで一方的に振られたような気持ちである。

「私、あなたとは合わない。ごめんなさい」

と。こっちから何も言っていないし好みじゃないし、てかごめんなさいって何で謝るのか?

そんなこと言われると、俺は君のこと好きだったのかもなんて考えだして、ロンリーハート、君じゃなきゃダメなのに、みたいな気持ちになってくるから不思議である。

というか本気じゃないぶん、恋愛ごっこみたいなメールのやり取りをするとあまり傷つかないのに感傷的な気分だけにはなれるからそれはそれで青春の1ページとして美しい思い出となり、本気の大恋愛でもなんでもない分、あとあと思い出してはその度にその子にメールなんかしちゃって、返ってくるのはもちろんそっけないメール。

そうされると結構気になってきて、やっぱしオレは君の事好きだったのかも、というか最初は俺に気があったよね、その時の気持ちに戻ってくれ!なんて思い始める、ああ困ったチャン。

なんでキスしなかったのか、なんで抱きしめなかったのか、おお、あの時のオレおバカちゃん、などと考え始めるのだが、そんな風に思っているのがおバカちゃんなのであって、あの時のオレは結構冷静であったはずなのである。

と、さ迷える33歳、もうすぐ34歳の転職活動は続く。

町の本屋 of 京王線つつじヶ丘 『世界屠畜紀行 THE WORLD'S SLAUGHTERHOUSE TOUR』

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  • 書名:『世界屠畜紀行 THE WORLD’S SLAUGHTERHOUSE TOUR』
  • 著者:内澤旬子
  • ISBN:978-4043943951
  • 刊行日:2011/5/25
  • 価格:857円(税別)
  • 発行:角川書店
  • ページ数:478
  • 形態:文庫

京王線のつつじヶ丘駅の近くに引っ越してきて5ヶ月が経った。

駅の周りにはオオゼキとライフというスーパーが2つ、ドラッグストアー、ドトール、マクドナルド、松屋、ゲオなどが並んでいて、典型的な東京郊外の私鉄駅前の風景である。

北口駅前のロータリーの奥にあるビルの前に幅の広い下り階段があり、その階段の下に書原という書店がある。

あれは私が大学2年生の時だったか、棚卸しのアルバイトをしたのも書原だった。

たしか月島店と阿佐ヶ谷店と霞ヶ関店?(銀座だったような記憶もあるが、公式サイトによると書原は銀座には無いみたい)の3店舗で計3日間の棚卸し作業をした。

2組になって、閉店中の店の中でリストに従って本をチェックしていく仕事だった。

新刊書店の本というのは結構きれいだと思っていたが、すぐに手が汚れてしまい、ずっと置いておけばそりゃ少し汚れるよなと思った記憶がある。

最終日は阿佐ヶ谷店で、仕事が終わって店の裏で給料をもらい(確か3万円くらい)、翌日にそのお金を持ってPlayStation2の本体を新宿に買いに行ったのである。

あれは初めての給料みたいですごく嬉しかった。

という私とは縁のある本屋さんが書原なのである。

棚卸しのバイト以降は縁が無かったが、今では私の家から一番近い本屋となった。

店の雰囲気は、由緒正しい町の本屋(ちょっと大きめの)。

ブックファーストやジュンク堂などとは違い、時間が10年ほど止まっている、と言ったら怒られるので、正しく町の本屋の伝統を守っていると言い換えよう。

私は書原つつじヶ丘店に入ると文庫コーナーに直行する。

書原つつじヶ丘店の文庫コーナーには新刊専用の場所は設けられておらず、各棚の前の平積みコーナーに紛れ込んでいるので見落とすことが多いので注意である。

おやと思ったのが上下巻のあるもので、普通だと上下巻は隣り合って平積みされているが、ここだと上下巻が重なって交互に置かれている。

だから上巻のみを買おうとすると下から下巻が出てきて、「あれ?下巻は買わないの?」と、お客に無言の圧力をかけるのである。

これはスペースの有効活用になるだけでなく、売り上げのアップにも貢献しているのだろう。

文庫コーナーの顔ぶれはそう簡単には変わらない。

そんな中に少しほこりをかぶって鎮座していたのが文庫版『世界屠畜紀行』であった。

数年前から探していたのだが、新刊書店では見つからず、かといって古本屋でも見つからず、忘れかけていたのだがこんなところで出会えるとは。

本書は著者の内澤旬子が屠畜に興味を持ったのをキッカケに韓国、インド、インドネシア、アメリカなどの屠畜事情をレポートしたものである。

筆者自身のイラストが添えられ屠畜の様子がよくわかる。

屠畜に関わる人間に対してのタブーの感覚はどうやって生まれるのか?というのがメインテーマになっていて、読んでいてウーンウーンと唸った。

特にオチも無いのだがつつじヶ丘の書原が好きになった、という話である。

JAVAの試験に合格したけど、戦争は起きないよね? 『下天を謀る』

下天を謀る(上) 安部 龍太郎 新潮文庫

下天を謀る(下) 安部 龍太郎 新潮文庫

  • 書名:『下天を謀る(上・下)』
  • 著者:安部龍太郎
  • ISBN:978-4101305257(上) 978-4101305264(下)
  • 刊行日:2013/4/27
  • 価格:上下ともに724円(税込)
  • 発行:新潮社
  • ページ数:455(上) 487(下)
  • 形態:文庫

JAVAの試験に合格した。

レベルとしては一番下のJAVA Bronze SEだ。

でもうれしい。

次はSilverだ。

そして転職活動だ。

わが社の業績は特によくならず、給料も戻らない。

早く転職しなくてはならない。

という時期に読んだのが『下天を謀る』。

図書館で借りた。

図書館でタダで借りたものをあーだこーだ言うのはあまりよくないとは思うが、許してください。

主人公は戦国時代から江戸時代を生きた藤堂高虎。

羽柴秀長に仕え、その死後は徳川家康に仕えた武将・政治家である。

戦国時代は織田信長の入京(1568年)を持って終わるという説が有力なようだ。信長が今川義元を破った桶狭間の戦いが1560年なのでその8年後に戦国時代は終わってしまうのである。

藤堂高虎はその戦国時代の終わり頃に、信長に滅ぼされることになる浅井家でデビューする。しかし織田信長が戦国時代にケリをつけてしまったあとのお話はどうも、気が抜けた感じがする。

織田信長は本能寺の変で倒れるのだが、信長の領国やらのほとんどを引き継いだ秀吉が、信長の勢いを借りて内輪揉めを制して天下を統一、そして秀吉が死んだ後にこれも信長の子分であった徳川家康が耐えて耐えて天下をもぎ取る。

その流れの中で藤堂高虎が秀吉の弟の秀長の家臣から家康の家臣となり、徳川体制を磐石なものにしていくというのがこのお話であった。

安部龍太郎は『蒼き信長』で桶狭間の戦いまでの信秀・信長父子の血沸き肉踊る戦国乱世の獲った獲られたを描き、私は大いに興奮した。今回もそれを期待したのだが、そもそも主人公は戦国時代が終わってから活躍する藤堂高虎である。あまり興奮はしない読書となった。

という時に自民党が「集団的自衛権の行使容認を閣議決定」した。

今すぐに戦争が起きたり、どこかの国を侵略したりすることは無いとは思うが、安部首相の生き急ぐような強引ぶりはどこかの国の昔の太閤が死の間際に文禄・慶長の役を引き起こしたのと少し似ているようでなんつーか、いい感じはしない。

自民党に投票した人たちは責任を持って安部首相を止めるよーに、そして自民に負けてしまった野党に投票した人も責任を持って安部首相を引きずり下ろす力を持った勝てる野党にしっかり投票するよーに。

JAVAの勉強をはじめた(再開した)けど 『JAVA 1 はじめてみようプログラミング』

JAVA1はじめてみようプログラミング 三谷純 翔泳社

  • 書名:『JAVA 1 はじめてみようプログラミング』
  • 著者:三谷純
  • ISBN:978-4798120980
  • 刊行日:2010/1/28
  • 価格:1,880円(税別)
  • 発行:新潮社
  • ページ数:280
  • 形態:CD-ROM付き大型本

私の勤める会社は4月が決算、そして前期(2013年5月-2014年4月)の赤字が決定した。

そのため、給料が下がった。

みんな同じ額下がったわけではないが私は3万円下がった。

そのため、同僚も2人辞めた。

私のおこづかいは2万下がり、妻のおこづかいは2万下がった。

次も決まらずに辞めると無給の期間が出てくるので家族のいる私にはそれはできない。

おととしの夏に精神的に調子を崩し、今の会社ではやっていられないと去年の1月くらいには転職活動を開始していた。

何社か面接に行き、内定ももらったのだが今の会社より給料が下がるので今の会社でしばらく続けよう、そう妻と決めた。

それから、去年の夏に再度精神的に調子を崩し、心療内科に行った。

その時に転職活動を再開、職種もデザイナーからプログラマーに変えることにした。

そのためにJAVAの勉強を始めた。

JAVAの一番簡単な資格(と言っても就職に有利になるわけではなく、あくまでもこれくらいの勉強をしたよ、という目安程度)を取ることにして本書を買ったのだが、去年の秋に受けた試験は見事に玉砕。

余裕、余裕と思っていたが正答率は40%、合格に必要な正答率は60%と、まったく及ばなかった。

その後、心療内科に行って心の病気を治すことを優先したためJAVAの勉強はひとまずお預けであった。

今回減給された給料額と、転職した際の給料額は大差がないことがわかった。

だから転職活動を再開した、転職の前にまずはJAVAの一番簡単な資格を取ることである。

試験はWEBで受けられるのでいつ受けてもいいのだが、万全を期して試験日は6月の最後の日曜日に決めた。

果たして結果は。

久々にサッカーの試合を見たが 『銀河のワールドカップ』

銀河のワールドカップ 川端裕人 集英社文庫

  • 書名:『銀河のワールドカップ』
  • 著者:川端裕人
  • ISBN:978-4087463002
  • 刊行日:2008/5/20
  • 価格:802円(税込 Amazon価格)
  • 発行:集英社
  • ページ数:512
  • 形態:文庫

サッカーの2014年ワールドカップブラジル大会、日本代表の初戦、対コートジボワール戦を見た。

雨だからなのか、夜だからなのか、日本代表はしなやかなコートジボワールに翻弄されていた。

日本代表メンバーは疲れているのか動きが鈍く、試合はつまらなかった。さらに後半のインジャリータイムのコートジボワール代表の狡猾?な時間の使い方にイライラした。

たしかに勝つためには必要かもしれないが何やってもいいのか?と。

ワールドカップは勝つのが大切なのだとしたら、狡猾な時間の使い方は正しい。

でも、それを見ていると嫌な気分になる。

こっちが負けているからなのか。

いままで見た中で一番楽しかったサッカーの試合ってなんだろうと考えてみる。

それは駒沢競技場に見に行った高校サッカーの試合だ、地元の都立三鷹高校が勝ち上がって。それを地元の友人たちと応援しに行ったのだ。

地元のチームが戦っていて、パスしたりシュートしたり、ディフェンスしたりするのに一喜一憂した。

だとするとワールドカップは高校サッカーの親玉とでも言うべきもので。

地元の気持ち、言うなればナショナリズムが激突する場でもある。

だからあのときの三鷹高校と今の日本代表は同じだと思えばいいのか。

でもそう思うのはちょっと難しいなぁ。

地元とは言え日本という単位だと大きすぎるもん。よく知ってる地元の人たちが出てるって気分にはなれないなあ。

で、銀河のワールドカップだが、これは地元(三鷹)の図書館で借りた。

毎週末に図書館に通い、転職に向けた勉強をしている。

その時についでに本も借りている。

超小学生級の実力を持つ3つ子の兄弟を中心にした桃山プレデターが銀河系軍団のレアル・マドリー(物語内ではレアル・ガラクシア、ジダンがゼットンでベッカムがベルバウムという名前)とミニゲームをして勝つというお話である。

クライマックスはレアル・マドリーとのミニゲームだとは思うのだが、私はジュニアクラスで日本ナンバーワンの実力を持つアマリージャを倒すところにグッと来た。

この物語には動きの悪い日本代表とか、インジャリータイムで時間稼ぎをする卑怯者は出てこないので実際のワールドカップよりオススメである。