ヤフオクで千夜一夜物語は売れるのか? 『バートン版 千夜一夜物語』

バートン版 千夜一夜物語(全11巻)

  • 書名:『バートン版 千夜一夜物語(全11巻)』
  • 訳者:大場正史
  • 挿絵:古沢岩美
  • ISBN: -
  • 刊行日:2003年-
  • 価格:-円(税別)
  • 発行:ちくま文庫
  • ページ数:-
  • 形態:文庫

ずっと職探しをしていたが、遂に次の仕事が決まった。

2014年は12月26日まで仕事だったのだが、その2014年最後の日のお昼に「採用」のお知らせが来たのである。

実は採用自体はその前の週にもらっていたのだが、給料面で折り合いが合わず断っていたのだ。

理由は、ボーナス額が多すぎるため、月の給料が低いという点である。

ボーナスが多けりゃいいじゃないかと思うが、月の給料が低けりゃ家族を持つ身としては辛いのである。

「ボーナスが多いのは魅力的なのですが、月給が低いので」と断ったのだが、「じゃあボーナス分を月給に還元します、ボーナスは低くなるけど」という回答を12月26日にもらったのである。

面接自体は12月の中ほどに行なっていて、雰囲気やら仕事の内容やらはかなり自分自身の希望と近いものだったので、できれば行きたかった。

だから、ほぼ即決で「行きます!」と答えたかったのだが、一応焦らして、というか冷静になりたかったので「年内考えさせて」と返答した。

会社の大掃除と納会を終えて家に帰って妻に相談した。

「いいのではないか」という答えをもらい、自身でも再度考えて、「行きます!」とメールをしたのが12月の29日だったか。

そして2015年の仕事始めの1月5日、今の会社の上司に「辞めます」と伝えたのである。

上司および社長の反応が「辞めないで!」だったら困るなあと思っていたのだが、反応は案外あっさりしていて「やっぱりな」という顔をしていた。

実際私が辞めると月に50万弱くらい(給与額プラスモロモロのランニングコスト)コストが浮くことになるはずなので、経営が苦しい会社としては痛いと同時にうれしくもあるのだろう。

社長は、私が辞めることに対して「気持ち的には半々です」と言っていた。

なんとか次の仕事は見つかったが、年末年始の忘年会やら新年会やらでお金が必要となり、ヤフオクでいろいろなものを売った。

一眼レフカメラや映像編集ソフトなど。

しかし、小金が入ったために気が大きくなりすべて使ってしまい、また金欠となりヤフオクに再度出品する予定となった。

売るつもりではなかった全集などの本を売ることに決めて、最初の白羽の矢を立てたのが『バートン版 千夜一夜物語(全11巻)』。

以前、ヤフオクで父の遺した10,000円以上で売れるはずだった本を1,000円で出品し、そのまま1,000円で落札され、落札者から「こんな価格ですいません」と言われた苦い記憶がある。

ヤフオクは通常、想定落札額よりも低い額で出品をするが、本を売る場合はちょっと違って想定の落札額で出さなくてはならないという事を苦い経験から学んだのでまず今回は9,800円ほどで出品したのだが、まったく落札されない。

本以外のマンガやらカメラやらはすぐに売れたのに、普通の本をヤフオクで売るのは難易度が高いのか。何度か値を下げているのだが、まだまだ落札されず、なんとも残念な気持ちになっている。

今の会社には大学生気分の抜けないTシャツ主体の恰好で行っているのだが、新しい会社はもう少しキレイな服を着ていかないとまずそう。

だから、新しい会社に着ていく服などを買いたいのだが、それも買えるかまだわからないのだ。

果たしてヤフオクで本は売れるのか?

ひどく落ち着く、軟着陸みたいな 『新版 貧困旅行記』

つげ義春 『新版 貧困旅行記』

  • 書名:『新版 貧困旅行記』
  • 著者:つげ義春
  • ISBN:978-4101328126
  • 刊行日:1995/3/29
  • 価格:590円(税別)
  • 発行:新潮文庫
  • ページ数:281
  • 形態:文庫

確か、大学時代に学校の生協で買って、それ以来数年に一度は読んでいる一冊だ。

蒸発をして九州の看護婦に会いに行く話から始まり、家族3人での旅行の話などが綴られていく。

つげ義春は漫画家であるが、この人の面白いところは漫画からでも文章からでも、そこから感じる印象がほとんど変わらないということである。

最初に読んだ時に文章がうまいなぁと思って、漫画はどんなの描くのだろうと興味を持ち漫画を読んだのだが、なんだろう、独特の間合いというかなんというかその、あれ俺は文章読んでいたのか、いや違う漫画だったかと気づくのだ。

私の好きなつげ義春の作品は家族が出てくるものである、若き日の妻とのお話の『日の戯れ』、『退屈な部屋』などは毎回読むたびにいいなぁと思う。

一人息子が出てくる『散歩の日々』、『無能の人』などは私がひとりっ子の三人家族だったせいか、読むと少年時代を思い出す。

私はつげの一人息子の正助に自分を投影するのだ。

この貧困旅行記にも家族の旅が出てくるが、これ、読むたびに私の子供時代の家族三人での旅行を思い出し、わが父(つげ)はこんなことを考えていたのかななどと思うのである。

今は、我が家も三人家族となり、私の視点は息子(正助)のモノから父(つげ)側のモノに移りつつあり、まあなんというか『無能の人』には憧れるけど、ああはならないようにと転職活動頑張ろうと決意を新たにするのである。

さ迷える34歳-転職大変記

ジャック・フィニィ 『盗まれた街』

  • 書名:『盗まれた街』
  • 著者:ジャック・フィニィ
  • ASIN:B000J8IBXQ
  • 刊行日:1979/3
  • 価格:340円(税別)
  • 発行:ハヤカワ文庫SF
  • ページ数:300
  • 形態:文庫

数年前までは、古本や図書館の本などは知らない人が読んだものなので汚いと思って敬遠していたが、ブックオフの100円コーナーで安さに釣られて本を買うようになってからは気にならなくなった。

だから最近は人から本をもらうことも多い。

君が捨てるなら、僕がもらうよということだ。

この本は、私によく本をくれる大学時代からの友人からもらった。

これは本当にあった話です、というような書き出しから始まる本書は、宇宙人が知らない間に愛する家族になりかわってしまう恐怖を描いたものである。

この物語が世に出たのは60年ほど前で、その当時の人たちにとっては家族が宇宙人になるというのはリアルで結構怖かったのだろうか。

私の会社は今にも潰れそうなので優秀な宇宙人が社長になり代わって危機を救ってくれないだろうかと強く思った、って社長も私に対して同じこと思ってるか。

転職活動はやや停滞気味で12月中に次の仕事が決まる気がしない。

来週に面接があるのだが、なんというかそこに受かってもそこに行くような気がしない、というか転職するという気が少しずつ小さくなっているような気もする。

多分それは、会社が潰れそうながらも私が新しい業務に慣れ始めたのとも無縁ではない。

今までやっていなかったサポート業務や出荷業務に慣れてきて、今までやってきたデザインの業務が今は少ない。

デザイン業務は時間が読めないのだが、サポートや出荷業務にかかる時間というのは毎日ほとんど同じだ。

だから、今では午後7時台に会社を出ることができ、家に帰ると息子が起きていて少し遊べることもあるのだ。

数か月前には考えられなかったことだ。

給料も下がっているし潰れそうなので会社に不満がないというわけではないが、不満が少しなくなり転職へのモチベーションが下がっている状態なのだ。

あんなに辞めたかったのに、どうもよくわからないものだ。

まあ12月というのはセカセカと時間が過ぎ、深く自問自答するような時間もあまりないのでそうなっているだけかもしれない、1月になったらまた転職したい気持ちが膨れ上がってくるのだろう。

義父さん書店 『騎手の一分』

藤田伸二 『騎手の一分』

  • 書名:『騎手の一分』
  • 著者:藤田伸二
  • ISBN: 978-4062882101
  • 刊行日:2013/5/17
  • 価格:740円(税別)
  • 発行:講談社現代新書
  • ページ数:176
  • 形態:新書

妻となる女性の両親にあいさつに行ったのが今から3年前、それから数か月後に私はその女性と結婚し、その女性の両親は私の義理の両親となった。

義理の母とは会話をするが、義理の父との会話はおそらくこの3年で通算10分も行なっていないのではないだろうか。

お互い何を言っていいのかわからない、というかお義父さん側がどう感じているかはわからないが、私は何を喋っていいのかよくわからない。合わないとか嫌いとかいうわけではないのだが、それがいわゆる、義理の息子とお義父さんの関係というものなのだろうか。

たぶん、そこらへんの道端で出会った2人であれば、会話はもっと弾んだかもしれないが、妻または娘という女性を介しての関係はなんつーか複雑なのである。

そんなギコチない2人であるが、競馬が好きなことと読書が好きという共通点がある。

ギコチない2人ながらも、私が土曜か日曜の午後に妻の実家に行くとほぼ必ず競馬中継が流れていて、姪っ子と遊んだり、お義母さんと話したりしている時でもレースの映像だけは目で追っている男2人なのである。

ゴールするとお義父さんが、私に気を遣ってなのかレースの短評などを言い、私も今の追い込み凄いですねみたいなことを返すのである。

ある日家に帰ると玄関に紙袋が置かれ、その中に文庫本がたくさん入っていた。

妻に聞くとお義父さんが古本屋に売るところを妻が私のために持ってきたようだ、ありがとう妻。

欲しいのだけ抜いたら実家に持って行ってあげて、と言われてすぐさま紙袋を開けた。

私は週に1回程度、会社の帰りにつつじヶ丘駅前の新刊書店書原に入り何かよさそうな本がないか文庫コーナーを物色するのだが、最近はお金がないため、新刊書店でチェックしてからブックオフで探したり図書館で探したりするので、欲しい新刊本はなかなか手に入らない。

でもお義父さんの捨てる予定だった文庫本たちは、私が欲しいと思っていた新刊書店の文庫本の半分くらいは網羅しているのではないかというくらいの充実ぶり。

宮本輝の流転の海の最新作の第6部をどうやって手に入れようか考えていたが、なんとその第6部が目の前に。

ああうれしい。

ありがとうお義父さん。

そんな中にあったのが本書である。

フサイチコンコルドでダービージョッキーとなった藤田のJRAに物申すというのが本書の主な内容である。

数年前までは中央競馬の出馬表に藤田の名をよく見かけたが最近では見かけなくなっていて、どうしたのかなと思っていたのだが、何やら騎手に嫌気がさして開店休業中のような状態らしい。

藤田伸二は田舎のヤンキーのあんちゃんみたいで、ジョッキーというのは押しなべてそういう面構えの人が多く、ケンカには絶対負けないかんな!という気合いの入った顔が私はキライではない。

実際馬の背中に命を賭けて乗って仕事をしている人たちなので、そういう面構えになるのだろう。

そんな愛すべきヤンキーあんちゃんが騎手という職業に嫌気がさしているのは寂しい限りだが、これがシービスケットみたいなクセのある名馬と出会い再生するみたいな話の小説が読みたい。

クライマックスは藤田伸二がなんらかの理由によりシービスケットみたいな名馬の命を救うためにアドマイヤのオーナーに頭を下げに行く場面にしたらどうか。

私のお義父さんもそんな競馬小説なら喜んで読むはずだ。

転職決まらず貧する私 『身体のいいなり』

karadanoiinari

  • 書名:『身体のいいなり』
  • 著者:内澤旬子
  • ISBN:978-4022617767
  • 刊行日:2013/8/7
  • 価格:580円(税別)
  • 発行:朝日文庫
  • ページ数:254
  • 形態:文庫

乳がんが見つかり、乳房の摘出手術をするまでの色々なゴタゴタと思いが綴られたのが本書。『世界屠畜紀行』では家畜の解体現場を見ても特にショックを受けなかった著者も、自分の体にメスが入るのには抵抗があるようで、全身麻酔をしての手術場面を読んでいて私も金玉およびお尻のあたりがむずがゆくというかヒョエーとなった。

病気と闘うにはお金が必要ということがヒシヒシと感じられ、現在の私が大きな病気になってしまったら私および家族はどうすればいいのだろうかと、しばし呆然とした。

今年の春に給料が下がり、それに伴ってお小遣いが下がり、そんなんではやっていけないと夏にビデオカメラを売ったお金を日々のお小遣いの足しにしてきたのだが、12月で遂になくなりそうである。

12月には忘年会が2つ、イベントごとが少し、それで破綻してしまう。

今年の夏の時点では12月には次の仕事が決まっていて給料も元の額に戻っているというもくろみだったが、いまだに新しい仕事は決まらず。

先週末は1か月ぶりに仕事の面接に行ってきた、結果はまだ来ていないが断ろうと思っている。

残業時間が今とあまり変わらないのと、給料も下がりそうな点、そして社長と合わなさそうというのが一番大きな理由だ。

週末に家族で近くの街に買い物に行ってきたのだが、私のサイフには2,000円ちょっとしか入っていなかった。

街まで歩いている時に、

「来月はクリスマスだから息子と姪っ子にクリスマスプレゼントを買ってやるんだ!」

と妻に宣言した。

すると

「じゃあ息子には私が何か買ってあげるから、あんたは姪っ子に買ってあげて、2,000円の可愛いあったかいコートがあったからそれね」

と返された。

私は来月のクリスマスまでに、私の残り少ないガラクタのような資産(本とか・・・)を売り払ってお金を作ろうと思っていたので、いまいきなりの2,000円はきつい。

でも、払えると言った手前、「今出せない」とも言えず、買い物先の洋服屋さん(しまむら)でサイフをから2,000円を出したのである。

その後、お昼を食べようとなりショッピングセンター内にある「はなまるうどん」に並んだのだが、私のオサイフにはもう支払い能力がなく、妻にお金を払ってもらい家族で1杯のきつねうどんを食べたのである。

さらに、同じ週末。

家族3人で私の実家に行った。

11月の終わりは私の誕生日であるので、母親からプレゼントをもらえるのでは?と期待したがそんなものはなかった。

息子や姪っ子へのプレゼント代にひいこら言っている身なので、母親から何かもらえれば(特にお金を希望)すごく助かると愚かな息子は思ったのである。

しかし、そもそも息子や姪っ子へのプレゼントによって減ったお金を自分の親からの援助で何とかしようと思っていること自体虫が良すぎるのであり、そうは問屋が卸さないのである。

まあしかし、プレゼント問題はなんとかうやむやになったが、問題は12月の忘年会であり、どうしようか。

私の本を売ったところでホントウに二束三文であり、本当に困った。

日本国民のみならず、世界の人民達の所持金および貯金額が100円程度にならないかと切に願う毎日なのである。

そうすれば1万円持っているだけで大金持ちになるという素晴らしいアイディア。

早くいい仕事見つけろよ。

逃げ出したい気持ち 『監獄ラッパー』

監獄ラッパー B.I.G.JOE

  • 書名:『監獄ラッパー』
  • 著者:B.I.G. JOE
  • ISBN:978-4101260815
  • 刊行日:2014/8/1
  • 価格:520円(税別)
  • 発行:新潮文庫
  • ページ数:270
  • 形態:文庫

オーストラリアに薬物を密輸したことで逮捕された日本人ラッパーの獄中記が本書。

異国の地の刑務所での日々がつづられている。

獄中記を読むと、刑務所の中と比べてシャバにいる今の自分の境遇がいかに恵まれているかということに気づき、ガンバらなきゃいかん!と思うのだが、今回はそうはいかなかった。

潰れそうな会社で、めげてしまいそうな気持ちをエンヤコラと必死で正常に保とうとしつつ転職活動をしている私から見ると、刑務所でのシンプル?に見える生活がうらやましかった。

刑務所の中が私の今いる環境よりいいわけはないのだが、なんというか、うーん。

会社を建て直すというような気概もなく、ダラダラとやる気のない状態で今の会社に勤め続けているという状況が私の精神に打撃を与え続けている。

早く転職したい、でも今より給料がいいところを見つけられない。

このまま転職できずに会社が潰れて・・・

会社から逃げ出したいという気持ちを押し殺しつつ無理している私が、刑期を終わらせて日本に帰ろうという強い意志を持っている筆者を見るととにかくまぶしいんだ。

米粒の悩み 『ご先祖様はどちらさま』

ご先祖様はどちら様 高橋秀実

  • 書名:『ご先祖様はどちらさま』
  • 著者:高橋秀実
  • ISBN:978-4101335568
  • 刊行日:2014/9/1
  • 価格:520円(税別)
  • 発行:新潮文庫
  • ページ数:274
  • 形態:文庫

現在も私の転職活動は絶賛進行中である。

10日ほど前に同僚がリストラされ辞めていった。

彼の業務がすべて私の業務となった。

その同僚がいる時は仕事をサボって面接に行ったりもできたのだが、細切れの、でもやらなくてはならない電話対応やら発送業務やらサポート業務が回ってきて大変である。

モチベーションもあがるはずもなく、どんよりとした気分で日々過ごしている。

会社は今年いっぱいは給料が出るようだが、来年はよくわからない。

わが社のお金の流れの話を聞くたびに、これではダメだろうという思いが強くなっている。

昼休みになると弁当を自分の席で素早く食べて、会社のイヤな雰囲気から一刻も早く抜け出し、近所の神社の境内に座り、スマホで転職サイトの情報を指でクイックイッとしている。

まだ会社にその同僚がいる時にプログラマの面接に行った。

しかし、給料面で折り合わず破談となった。

ネックはとにかく給料面である。

結婚していて子供がいて、現状で妻が専業主婦となると、給料の額は今より落とせない。

現状で私の自由になる1か月のお小遣いはちょうど1万円なのだが、1万円月給が下がると、私のお小遣いはゼロとなる。

家族貯金などを削ればいいと思うのだが、なんつーか、それは言えない。

意地なのかなんなのか。

高橋秀実は毎回面白いテーマで文章を書いているが、本書は自分の先祖に興味を持ち、そのルーツをなんとかたどってみたら高貴な血筋にたどりついた、というお話である。

自分の両親は2人、祖父母は4人、その前の世代は8人、16人と4世代辿っただけでご先祖は倍々に増えていき、30世代遡ると1,073,741,824人(10億人!)となる。

さらに、これは30世代目だけの数だから、1から29世代目を含めるともっと多い。

だから自分のご先祖になんらかの高貴な血が入っているのは当たり前なのである。

それだけのご先祖様がいることを考えると転職して給料が下がるかもみたいな話は米粒みたいなもんなのであり、転職などどうでもいいし、1万円給料が下がっても別に誰も悲しまないし、そんなの気にするなみたいな気持ちになるが、やはり私自身は十億とか何百億という数のうちの一つの米粒であり、米粒は米粒なりの悩みがあるから、さあ大変だ。

働く喜びってなんだろう。 『新装増補版 自動車絶望工場』

新装増補版 自動車絶望工場

  • 書名:『新装増補版 自動車絶望工場』
  • 著者:鎌田慧
  • ISBN:978-4062770392
  • 刊行日:2011/9/15
  • 価格:629円(税別)
  • 発行:講談社文庫
  • ページ数:384
  • 形態:文庫

数年前に購入し、何回か読もうと思って手に取ったが「絶望」という文字が目に飛び込んできてイヤな気分になったの読まずここまで来た。

会社の業績不振により、減給をされ、さらに会社自体も数ヶ月先がどうなるか見えない。

2年前に上司との関係から精神的に参ってしまい、それ以降ずっと転職活動を続けているが、

まだ踏ん切りがつかない。

そんな時の会社の業績不振であり、給料カット。

私が辞めるのが先か、会社がつぶれるのが先か?

というチキンレースをしている。

その間にも気の早く賢い同僚達数人は会社を去っていった。

メンバーが減ると業務にしわ寄せが来る。

もうどうしようか・・・

という現在の私の状況へのヒントがあるかもしれないと思い、読もうと思って手に取ってはやめていた本書を読んでみる気になったのである。

ルポライターである筆者が季節工(期間限定の工員)としてトヨタの自動車工場で働いた記録が本書。

トヨタの自動車工場での奴隷のような労働が細かく書かれているが、自分の今の状況と比較するとそこまで変わらないのではないかと思ってしまう。

絶望は「希望」というものがまったく無い状態のことだが、私も仕事をしているとそのような気持ちになってくる。

上司に逆らえない状況でつぶれそうな会社で減給されながら働く、というのは絶望とまでは行かないが、絶望にちょっと近づいているように感じる。

働く喜びってなんだろう。と帯に書いてある。

確かに。

なんだろうか。

働く喜びって。

会社に入った当時は楽しかった、尊敬する上司に一応希望通りの仕事。

私が今ほしいと思っているのは働く喜び、ではなく、まずは安心感と、安定した気持ちだ。

来年の今頃、私は何をしているのだろうか。

強くてキラキラした戦国ニューヒーローの誕生 『剣豪将軍義輝』

義輝

  • 書名:『剣豪将軍義輝』「上巻 鳳雛ノ太刀」「中巻 孤雲ノ太刀」「下巻 流星ノ太刀」
  • 著者:宮本昌孝
  • ISBN:上巻978-4198934613、中巻978-4198934620、下巻978-4198934637
  • 刊行日:2011/11/2
  • 価格:上巻701円(税込)、中巻741円(税込)上巻771円(税込)
  • 発行:徳間文庫
  • ページ数:上巻362、中巻406、下巻541
  • 形態:文庫

数年前に戦国小説『ふたり道三』を読んで、宮本昌孝のファンになった。それから同じ作者の『風魔』を読んだが、羽柴秀吉が織田信長の後を継いでからの時代のお話なので血湧き肉踊らなかった。

戦国時代で一番輝いていた一番の有名人と言えば誰が何と言おうと織田信長であり、それ以外の方々は刺身のツマみたいなものである。

特に面白みの無いのが羽柴秀吉と徳川家康で、ふたりとも悲劇的な死に方をしていないせいか結末を知るものとしてはドラマに緊迫感を感じにくい。

さらに2人とも信長の偉業を運よく受け継いだだけであり、親の七光り感は否めない。(七光りと言えば信長もそうだし、秀吉にも家康にもいろんな事情があるのは承知の上ですが)

その信長のお話の第一のクライマックスは桶狭間の合戦である、弱小大名である信長が東海道の覇者今川義元を寡勢で討ち取る。

この桶狭間で勢いを得た信長は越前の朝倉家を討とうとするのだが、またピンチに陥る。妹婿の近江の浅井長政が裏切るのである、これが金ヶ崎の退陣に繋がり、なんとか命拾いした信長は姉川で朝倉・浅井の連合軍を破る。

と、数多くのピンチと勝利を経て信長はあの本能寺の変に突き進んでいくのである。

ピンチ→勝利→そして悲劇とお話のタネがたくさん、血湧き肉踊るモロモロがたくさんなのが信長のお話である。

この戦国の代表者でありヒーローが生きている時代が戦国時代の中で一番面白いと、私は思うのだ。

だから戦国小説を読むときは信長以前なのか、信長と同時代なのか、それとも信長以降なのかで小説に対する期待度が違ってくる。

だから、たまに信長がほとんど出てこないのに面白い小説があったりすると驚くのである。その代表作が宮本昌孝の『ふたり道三』であった。(少しだけ出てくるんだけども)

信長を(ほとんどというか主役に)使わずにこれだけヒリヒリとハラハラとドキドキとする戦国小説は今まであっただろうか?と私は大興奮した。

斉藤道三という有名だけども、戦国群雄たちの中ではずるがしこいオジサンというイメージのアンチヒーローの物語だったがとにかくスゲー面白かった。

斉藤道三が実は2人いたという設定から親子の争闘の物語と、秘剣櫂扇をめぐるめくるめくチャンバラ忍術ごっこが展開されていく。

そこで、本作である。本作の始まるのは桶狭間よりも前、つまり信長以前(信長はすでに生まれているけど、桶狭間以前が信長以前か)である。期待は高まる。足利義輝は信長とどう絡むのか、それが本作に対する私の期待である。

そして、本作も親子の争闘の物語と、秘剣と最強の剣豪をめぐるめくるめくチャンバラ忍術ごっこが展開されるのである。

意外な親子と、チャンバラ忍術を重ねるという宮本昌孝の王道パターン?がここでも展開される。

義輝は信長とどう絡むのか?それは読んでからのお楽しみである。

惜しむらくはちょっと短すぎること(充分に長いんだけど)。そもそも実録小説でもなく、ふたり道三のようなキリキリ感も必要ないのだから、琉球、九州、北海道まで廻国修行していろんな事件を解決!みたいな形式にして全10巻くらいで刊行しても面白かったのではないかと思ったのだが、義輝は松永久秀に殺される運命にあるので、読者には終わりがわかっている、なのでその分切ないのだ。

で、そのことが物語にヒリヒリ感を生みだしている。私は本作を読んでいる途中で、何度も結末がハッピーエンド、つまり足利義輝が松永久秀に殺されずに生き延びて、浮橋や朽木鯉九郎、梅花に石見坊玄尊と小四郎、明智十兵衛(光秀)と共に日本全国で悪者をバッサバッサとなぎ倒して欲しいなと思ったものだが、読者に主人公を生き延びさせてあげたいと思わせる一つの原因は、主人公に悲劇的な最期が待っていることの裏返しでもある。

つまり、悲劇の主人公であるがゆえに、義輝は愛され、物語も愛されることになるのだ。だから、やっぱり義輝は生き延びないのである、ネタバレになるけど。でも義輝がどこかで生き延びていて欲しいと願う読者の気持ちは、義輝の息子が活躍する続編『海王』で少しだけ実現している。

で、二条御所での松永久秀の軍勢との最期の戦いを読んでいて、作者はこのパートを一番書きたかったのではないかと思ったのである。何故なら、戦国のニューヒーローは既存のヒーローである信長を超えなくてはいけない、その信長の最期の場所がどこだったかと言うと京都の本能寺なのである。

つまり、ニューヒーロー義輝は本能寺の近くの二条御所で信長と似たような最期を遂げるのである。時代的には前後しているのだが、逆に言えば信長の前には義輝がいたのだという意味にも取れる。

で、作者はさらに義輝に対する権威付けとして、まあ義輝は既に将軍なので権威付けというのは矛盾した言い回しになるのだが、つまり戦国ニューヒーローとしてのハクを付けるという意味で、戦国の三傑(もちろん信長、秀吉、家康)が義輝の才能に惚れるという描写を物語中に挿入している、さらに戦国のアンチヒーローである松永久秀と明智光秀も義輝を大器として一目置いているという描写を入れるのを忘れない。

もちろん明智光秀は義輝の味方なので、アンチヒーローではないのだが、彼が信長を好いていなかったという描写を入れることで本能寺の変の謎に対する伏線も入れている。もちろん本書では本能寺の変は描かれないので、その伏線は回収されないのだが、まあとにかく続編を意識したような持って行き方は、うーんうまいぞ!

うーむ、なんつーか、翻訳のせいにはしたくないけど 『ZOO CITY』

zoo city

  • 書名:『ZOO CITY』(ズーシティ)
  • 著者:ローレン・ビュークス
  • 翻訳:和邇桃子
  • ISBN:978-4150119065
  • 刊行日:2013/6/20
  • 価格:860円(税抜)
  • 発行:ハヤカワSF文庫
  • ページ数:447
  • 形態:文庫

殺人を犯すと一頭の動物と一緒に暮らすことになる、という面白い設定の本書。

その動物憑きの女性が南アフリカのヨハネスブルグで、ある双子ポップミュージシャンの片割れを追うという探偵ハードボイルドモノである。

期待して読んだが、翻訳のせいなのか、実際の文体のせいなのか、とにかくわかりにくい。

何が起きているのか、誰がしゃべっているのか・・・

実際に訳が悪いのか、そもそもの原書が悪いのかはわからないので断言をするのはイヤだけども、うーん、この作者と訳者の作品は今後買わないと思った読書だった。