妻または恋人または同居人または娘が妊娠した男性に 『予定日はジミーペイジ』

予定日はジミーペイジ

  • 書名:『予定日はジミーペイジ』
  • 著者:角田光代
  • ISBN: 978-4101058276
  • 刊行日:2010年7月28日
  • 価格:590円(税別)
  • 発行:新潮文庫
  • ページ数:268
  • 形態:文庫

「つのだみちよ」だと思っていたが「かくたみちよ」だよと誰かに言われたのはいつだったか、私には関係の無い作家だとずっと思っていたが、妻から薦められて読んでみた。

ちょうど2人目の子供が生まれる少し前のことだった。

妊娠した女性(30代?)が自分の体調の変化にとまどい、夫にイライラとしながらもなんとか出産日を迎えるという筋書きものである。物語は世の中(特に男性)が求める無限の愛に満ちた「母親像」からは少し離れた、かなり冷静で現実主義的な女性の視点で進んでいく。

物語のリアルさから「つのだみちよ」が実際に妊娠・出産を経験したのかと思い、読後に本書と角田光代のことを調べてみたがそうではなかったらしい。妊娠経験のある色々な女性にインタビューをしたのだろうか。

自分が体験していないことを体験したように書くというのはプロの作家の技術なのだろう。

妊娠している女性とどう接していいかわからない!という方にはオススメである。

再就職から始まる壮大な物語 『不毛地帯』

不毛地帯

  • 書名:『不毛地帯』

  • 著者:山崎豊子

  • 発行:新潮文庫

  • 形態:文庫

  • 第1巻

    • ISBN: 978-4101104409
    • 刊行日:2009年3月15日
    • 価格:890円(税別)
    • ページ数:638
  • 第2巻

    • ISBN: 978-4101104416
    • 刊行日:2009年3月15日
    • 価格:790円(税別)
    • ページ数:590
  • 第3巻

    • ISBN: 978-4101104423
    • 刊行日:2009年3月15日
    • 価格:840円(税別)
    • ページ数:634
  • 第4巻

    • ISBN: 978-4101104430
    • 刊行日:2009年3月15日
    • 価格:790円(税別)
    • ページ数:557
  • 第5巻

    • ISBN: 978-4101104447
    • 刊行日:2009年3月15日
    • 価格:840円(税別)
    • ページ数:592

1945年8月15日、日本軍の大本営参謀・壱岐は敗戦の報せを持って満州に渡る。

壱岐はすぐに日本へ戻る予定だったが、同胞を捨てて日本に戻る気になれず満州に残り、その結果満州に侵攻してきたソ連軍に捕まってしまう。

壱岐を待っていたのはシベリアでの長く苦しい抑留生活だった、仲間を何人か失いつつも過酷な環境を生き延びた壱岐はなんとか日本に帰国する。

敗戦から10年以上経った日本にで、壱岐はまるで浦島太郎、自分が死力を尽くして戦った太平洋戦争は過去のものとなり、日本は繁栄に向けて走り出していた。

元部下の再就職の口を探し、自分の就職は二の次であったが、近畿商事の大門社長から大本営参謀の知恵を貸してくれと入社を請われる。

職歴がイコール軍歴となっている壱岐だが昔の自分の軍歴を利用したビジネスはやりませんよと念を押した上で近畿商事に入社する。

しかし、壱岐は自衛隊の次世代戦闘機受注を巡る商社間の争いに巻き込まれていく・・・

全5巻だったが、一気に読み切ってしまった。

年末に義理の父から面白いと言われ、もらったのだが、ありがとうございますお義父さん。

大学生時代に読んでいたら商社への就職を考えたかもしれないくらい、商社に対するイメージが変わった。

商社マンって結構かっこいいなと。

主人公の壱岐が、シベリア帰りで自分の畑違いの商社に再就職するのだが、私もちょうど転職をしたばかりだったのでその境遇と重なった。

と言っても生き馬の目を抜くような商社マンの世界と今私が行っている研修に毛の生えたような仕事では大きな違いがあるけども。

全員が感情論になっている今だから 『信長燃ゆ』

nobunagamoyu

  • 書名:『信長燃ゆ(上・下)』
  • 著者:安部龍太郎
  • ISBN:978-4101305165、978-4101305172、
  • 刊行日:2004年10月1日
  • 価格:710円、790円(税別)
  • 発行:新潮文庫
  • ページ数:481、564
  • 形態:文庫

安保法案というものが衆院を通過した。

世の中は戦争になるという雰囲気ができてきて、さらに太平洋戦争に日本が突入したときに今の空気が似ているだとか言う人たちもいる。

集団的自衛権が行使できるのであれば、戦争ができると言うことになり、じゃあ戦争しよう、そして徴兵制だということになるのだろうか。

ある意味当たっていると思う。

でも、なんか違和感なのだ。

本書は、天皇制を乗り越えようと画策する織田信長の野望を天皇側(天皇を傀儡とした朝廷側と言った方がいいか)の近衛前久が潰す(本能寺の変)という話である。

天皇を傀儡とする朝廷が日本の全てを決めていたらスペインやポルトガルに攻め込まれてしまうのでは?と憂慮する織田信長は天皇制を超える(潰す)事を考えるのだが、それを察知した朝廷側がそれを先に潰すのである。

信長が本能寺で殺されちゃったのはスペインとかポルトガルの脅威を自分の頭の中だけで解決しようとしたからなのだろうか。ねえどうする?スペインとかポルトガルの植民地になっちゃうかもよ?って信長が大声で言っていれば少しだけ歴史は変わっていたかもしれない。それがいい方向にかはまったくわからないけど。

信長が倒れた後、その家臣であった秀吉が文禄・慶長の役という太平洋戦争に非常に酷似したムダな戦争を行い、そのさらに家臣であった家康が鎖国政策という外国と大規模な戦争をしにくい体制を作り上げた。

今の状態が文禄・慶長の役の前の状態であるとすれば非常に恐ろしいが、実際にどうなるかはわからない。

憲法だとか天皇だとかがどうだということじゃなくて、戦争が起こって、それによって殺されたくもないし殺したくもない。

そのために色々考えるべき時に来ていると思うのだ。

憲法とか安保法案とか言っている場合ではない、まず脅威があるのか、そこに、あるのか?ほんとうに。

憲法をどう解釈するかとか天皇がどうだとかで右と左で言い合っている場合ではない、そうじゃなくてみんな平和に暮らしてくにはどうするのがいいのか、どういう憲法がいいのかを話し合わないかい。

ねえ。

続編はいつだ? ヒリヒリとするサバイバル小説『突変』

突変

  • 書名: 『突変(とっぺん)』
  • 著者: 森岡浩之
  • ISBN: 978-4198938895
  • 刊行日: 2014年9月15日
  • 価格: 1,000円(税別)
  • 発行: 徳間文庫
  • ページ数: 733
  • 形態: 文庫

小説には、「雰囲気を味わうもの」と「先が気になるもの」の二つがあるように思う。

本作は最近読んだ中でも「先が気になるもの」の中で一、二を争う面白さだった。

舞台はごく近未来の日本。地球規模で突変と言われる事故が相次いで起きていて、大阪周辺の地方がパラレルワールドの地球と入れ替わってしまって数年が経っていた。

パラレルワールドの地球には凶暴な生物たちが多数棲んでいて、大阪周辺が裏返ったため、そこが凶悪な地域に変貌してしまっていた。

日本のどこかでまた突変が起きるのでは?と戦々恐々として人々は過ごしていた。

そんな時、関東のある市にある町内がいきなり突変してしまう。

突変はもっと大きな地域で起きると想定されていたため、備蓄の食料もないし電気も水道の用意もない、とないないづくしのサバイバルが始まるのである。

登場人物たちはヒーローではなく、そこらへんの人たち。

ニート?の青年、町内会の会長、思い込みの激しい市議、スーパーの店長、など。

さて彼らは元の地球に戻れるのだろうか?

みんな突変して、嘆き悲しむが、唯一夫が突変して裏地球に行ってしまっていた女性とその息子だけは夫(父)に会えるのではないか?と喜んでいるという設定がミソになっていた。

いきなり今住んでいる町内が裏返ってしまったら?と考えると恐ろしい。

隣の人たちと未知の凶暴な生物たち相手にサバイバルできるのか。

ネットにもつながらないだろうし、スマホだって使えない、突変の情報を検索しようにもそんなことはできないのだ。

本作品はこれ以上続くと面白くなくなるかもしれないという絶妙なところで終わっている。

誰もが気になる突変の謎解きにはまだ踏み込まないし、物語の中でも触れられている突変で大儲けをしたらしい関西の怪しいおじさんについてもほとんど語られない。

続きがとにかく気になるのだが、これ以上続くと面白くなくなるかも。

ああジレンマ。

迷路と迷子と非日常 『四次元温泉日記』

四次元温泉日記

  • 書名:『四次元温泉日記』
  • 著者:宮田珠己
  • ISBN: 978-4480432384
  • 刊行日:2015年1月10日
  • 価格:720円(税別)
  • 発行:ちくま文庫
  • ページ数:294
  • 形態:文庫

『晴れた日は巨大仏を見に』でとても有名?な宮田珠己の温泉「旅館」に焦点を当てたお笑いノンフィクションが本書。

温泉旅館の主役は本来温泉であるはずだが、本書の主役は温泉旅館の建物自体である。

ホテルだとそうでもないが、旅館は建て増しを重ねているところが多く、新館と旧館やらが入りまじり、玄関でチェックインして仲居さんに連れられて部屋に入って窓の外を見ると思いがけない方向の景色だったりしてとても混乱する。

本書には著者の手による、各温泉旅館の館内図が挿入されていて、実はこれが本書の本当の主役なのである。

世の中には迷子になるのが好きな人間とそうではない人間がいる。

私は夜に知らない街を散歩してあわや迷子になるのでは?今日はお家に帰れないのでは?という期待と恐怖が心に満ち溢れるのがとても好きであり、行き止まりに出くわすと大興奮する。

私が結婚をした女性(妻)とも子供が生まれるまではよく夜の街を散歩していた。しかし、我が妻は道が行き止まりになるのが嫌なようで、「ここ行き止まりっぽいね!」と興奮して私が言うとこの人の頭の中が理解できないという顔をしていた。

そんな女性とうまくやっていけるのだろうか、と心配になったが、行き止まりに興奮する夫を見た妻の方がその思いは強かったろう。

しかし、そんな些細な事を気にしているようでは結婚生活は長く続かない、というか、そんな些細な事は日常という奔流にあっという間に流されていってしまう、結婚は驚きと失望と忍耐の連続であり、その中に希望と幸せが詰まっているのだ。

夜の街を散歩していると家々の灯りが目に入ってくる、自分は知らない街という非日常空間にいるが、その街を日常とする私の知らない人々が日常の生活を私にとっての非日常に見える家の中で送っている。

私の知らない日常と私の非日常が家の灯りで繋がる。

温泉旅館の迷路と知らない街での迷子、そんな日常と非日常のあわいをフワフワと漂ってみたいならぜひおすすめの一冊である。

最近は夜の街を散歩する機会が無いので、久々に散歩をしてみよう。そうしよう。

戦国スパイ小説『銀の島』の登場だ!

ginnosima

  • 書名:『銀の島』
  • 著者:山本兼一
  • ISBN: 978-4022647436
  • 刊行日:2014年5月30日
  • 価格:840円(税別)
  • 発行:朝日文庫
  • ページ数:568
  • 形態:文庫

本作はフランシスコ・ザビエル、その従者アンジロウ、ポルトガルの密使バラッタの3人を軸に描かれた戦国時代のお話である。

第二次大戦前にある日本人がインドのゴアである書物に出会うことで物語は始まる。その書物はザビエルの従者アンジロウが書いたもので、ザビエルの知られざるお話が書かれていた・・・

学者か小説家がある町、または村で知られざる真実が書かれている書物に出会う・・・という風にお話が始まるのが私は好きだ。

「これは真実の話です」と読者に思わせるように話が進んでいき、ウソだろ?と思いつつも、別にウソでもホントウっぽく見える方が物語的には楽しいからウソでもいいや、でもやっぱりホントにあったことなのでは?みたいに感じられる小説が好きだ。

私が10代の終わりに読んでいたフレデリック・フォーサイスのお話なんて、みんなそんな感じであった。『オデッサファイル』なんて、ホントとウソが非常にうまく混じり合っていてスゲー楽しかった。

そのフォーサイスの真骨頂がフランス大統領のシャルル・ド・ゴールの暗殺未遂事件を扱った『ジャッカルの日』で、これはホントウに面白かった。でさらに似たような話だとジャック・ヒギンズの『鷲は舞い降りた』もあって、これはイギリスのチャーチル首相をドイツ軍が誘拐しようとする話なのだが、あ、あとグレン・ミードの『雪の狼』もすごかった。スターリンを暗殺しようとソ連に潜入する話で・・・

話が、それた、イヤあんまりそれてないか。歴史の真実が書かれている!みたいに思わせて読者を楽しませるスパイ小説が私は好きだったのだ。

本作『銀の島』で暗殺もしくは誘拐の対象となるのは、中国地方の石見銀山であり、その事件の実行犯になろうとしているのがポルトガル人のヴァレッタ、そしてそれを防ぐ正義のヒーロー?はアンジロウ、で敵か味方がわからないのがザビエルである。

楽しそうでしょ?読んでいる時には気づいていなかったが、これはスパイ小説である。血沸き肉躍る隠密の攻防戦の舞台は第二次大戦でも冷戦でも戦国時代でも面白いのである。

ズームイン朝と山本一力『くじら組』

くじら組

  • 書名:『くじら組』
  • 著者:山本一力
  • ISBN: 978-41676701777
  • 刊行日:2012年7月10日
  • 価格:629円(税別)
  • 発行:文春文庫
  • ページ数:412
  • 形態:文庫

去年の終わりに、義理の父から読まなくなった本を大量にもらったのだが、その中に入っていたのが本作品。

山本一力との出会いは、今から10年くらい前だろうか、何かの賞を受賞して日本テレビの『ズームイン!!朝!』に家族で出演していたのを見たのが最初だった。

自転車で日本テレビまでやってきました、と清々しく話していたおじさんが山本一力だった。

何で朝の情報番組に自転車でやってきたのかは謎だったが、普通のおじさんが家族で出演という事態が頭の片隅に残った。

それから本屋で見かけるたびに気になっていたのだが、このたび義理の父からの縁により遂に読むこととなった。

舞台は幕末の土佐藩。

黒船が土佐沖を走っているのをくじらを捕る漁師たちが見つける。

その漁師たちの集団であるくじら組が江戸に上るまでのお話である。

あらすじとしてはなんてことはない、先が気になるだとか、驚天動地の結末などはない。

だが、いちいち描写が細かく丁寧だ。

最近の歴史・時代小説に慣れていた私は、最初は重いなと思ってしまったが、

その丁寧な語り口が、数年寝かされた古酒のような味わいを醸し出すのである。

なかなか進まない話に、最初は欲求不満となるが徐々にその物語世界に引き込まれていく。丁寧な描写が物語世界の中へ読者を誘っていくのである。

山本一力を毎日読みたいとは思わないが、年に数回読みたくなる作家になりそうだ。

ヤフオクで本が売れた! 佐内正史『massage』

message 佐内正史

  • 書名:『message』
  • 写真:佐内正史
  • ISBN: 978-4582277463
  • 刊行日:2001年4月
  • 価格:新品で5,000円(ぐらい)
  • 発行:平凡社
  • ページ数:-
  • 形態:写真集

ヤフオクで本が売れないと以前書いたがやっとヤフオクで本が売れた。

売れたのはこの『message』と『定本 久生十蘭全集』だ。

『message』は12月に出品して、売れるまで2か月ほどかかった。

1週間出品しては、売れずに再出品を繰り返していたので、売れた時には気づかなかったほどだった。

当初は5,000円ほどで売ろうと目論んでいたが結局落札価格は3,000円。

久生十蘭の方も購入価格12万のところ、落札価格は8万円。

こちらは早く売りたかったのだが、ライバルが出していたので、それよりも安い価格で出せば早く売れると見込んだところ、その通りすぐに現金となった。

『message』の方は思い入れも大きくはないのだが、久生十蘭は何年もかけて集めたものだけになんというか魂を売り渡してしまったような気持ちになったが、読まない本なので魂などと言っては読んでいる人に失礼だろう。

おそらく私の魂がこもっているのは現代教養文庫版の久生十蘭傑作選の方だ、こちらは値段が高くはならないはずなのでヤフオクに出品するという誘惑に駆られることもなく天命を全うすることであろう。

結局大切なものでも使わない高いものは現金にしてしまった方がいい。

はず。

と思っている今日この頃なのだ。

さ迷える34歳-転職大変記 一応完結

おくうたま 岩井三四二

  • 書名:『おくうたま』
  • 写真:岩井三四二
  • ISBN: 978-4334765996
  • 刊行日:2013年7月10日
  • 価格:781円(税抜)
  • 発行:光文社文庫
  • ページ数:469
  • 形態:文庫

去年の終わりに転職がやっと決まり2月の始めに7年務めた会社を辞め、次の日に新しい会社に入社した。

新しい職場になって2週間経ったが、電話サポート応対や出荷業務などに追われず、自分のデザインと開発の仕事に打ち込める環境でとても気持ちよく仕事ができている。

会社の会議にも参加したが、前の会社よりも意見が飛び交いみんな笑顔。

当たり前だが会社が替われば、環境も替わるし仕事の内容も進め方も違うものになる、だから気持ちも変わる。

今のいい気持ちがどれくらい長く続くのかはわからないが、いい気持ちで仕事を進めていかなくてはならないと強くまじめに思う今日この頃なのだ。

転職活動は長かった、でも転職してしまうとその時の記憶や気持ちも遠い彼方に行ってしまう、ずっと転職活動している時の気持ちを引きずっていてもしょうがないが、転職先の決まらない不安感やいらだちの記憶は忘れない方がいいはずだ。

本書は織田信長に攻め落とされそうになっている浅井家の小谷城から浅井長政の庶子である喜十郎が逃れ、京都の瑞石という医師(くすし)のもとに匿われることから話が始まる。

浅井家の復興を目指しながら、瑞石と共に患者を求めて戦場に赴く喜十郎。

浅井家の復興は果たしてできるのであろうか?という流れのお話である。

ラストは、やはりなという展開でベタだなと思いながらも少し目頭が熱くなってしまった。

運命に翻弄されつつも自分の運命を切りひらいていく、と書くとあまりにもベタな表現だが、転職活動で色々な会社の思惑に翻弄されていた私がやっと転職を決めたという事情とも重なり感慨深い読書であったのだ。

ヤフオクで久生十蘭全集は売れないのか、やっぱり。 『定本 久生十蘭全集』

定本 久生十蘭 全集 国書刊行会

  • 書名:『定本 久生十蘭全集(全12巻)』
  • 著者:久生十蘭
  • ISBN: -
  • 刊行日:2008年-
  • 価格:1~7巻:9,500円(税別)、8~11・別巻10,000円円(税別)
  • 発行:国書刊行会
  • ページ数:-
  • 形態:-

お金不足により手も足も出ないので、ヤフオクで使わない物いらない物を2014年の末から売っている。

一眼レフカメラ、電子書籍リーダー、映像編集ソフト、ゲームソフト、マンガなどは出品すればすぐに売れた。

だが、文字だけの本が売れない、売れないったら売れない。

一番高く売れると踏んでいたのだが、全く売れない。

ホントに売れない。

出品しているのはちくま文庫の千夜一夜物語の全集、そして国書刊行会から出た久生十蘭の全集(12巻)である。

千夜一夜物語は1万円行けばいいかというところだが、久生十蘭の全集は1冊が定価10,000円近くになり、それが12冊あるので中古とはいえ100,000円近くで売れてほしいと思っていた。

でも売れないのだ。

久生十蘭を初めて読んだのは大学時代のことだ、現代教養文庫から出ていた久生十蘭傑作選を大学の図書館で読んではまったのである。

それから久生十蘭傑作選をすべて集め、朝日文庫のものも全て買ったのだが、まだまだ物足りない。

数年前に十蘭の全集が出るというので、吉祥寺のパルコブックセンターで予約をした。配本は半年に一回くらいで、毎回楽しみに買っていたのである。

とは言うものの全集は大きくて重たくて高価なので、手軽に持ち歩いて電車の中で読んだりはできない。

私の読書タイムはほとんどが電車の中なので、読むのは文庫本ばかりである。

そんな私が十蘭の全集を集めても全く読まないのはわかっていたのだが、いつか読むかもしれないし、十蘭の全集を持っているという満足感に浸りたいためだけに全て買い集めてしまったのである。

でもしかしである、金欠病になってしまった私には十蘭の全集を持っていることから得られる心の満足感よりも、コンビニに入って食べたいお菓子が買えるというお腹の満腹感の方が大事なのであった。

出品して、落札されて10万円手に入れて幸せになる図を想像していたのだが、売れないんだ。

なんでだ。

だれか買って!

(結局売れました、詳細はこちら↓)

ヤフオクで本が売れた! 佐内正史「massage」